46本目(10月6日鑑賞)

軽いノリで観たらやばいヤツ
ジョーカー

監督・脚本:トッド・フィリップス/脚本:スコット・シルヴァー/音楽:ヒルドゥル・グーナドッテイル
出演:ホアキン・フェニックス/ザジー・ビーツ/フランセス・コンロイ/ブレット・カレン/ビル・キャンプ/シェー・ウィガム/ロバート・デ・ニーロ

ゴッサムシティで病気の母(フランセス・コンロイ)と暮らすコメディアンを夢見るアーサー(ホアキン・フェニックス)。貧困や政府の腐敗などの不条理にも屈せず、笑顔で日々を送っていた彼だったが、仕事仲間からもらった銃が原因で仕事を失ってしまう。失意の中で富裕層のサラリーマン3人を地下鉄で銃殺し、警察から追われる身となり、母が頼っていた大富豪にも冷遇され、自分の中で何かが壊れていく。


神経障害に悩まされながら母の介護を続ける主人公は、信じていた者に裏切られ、犯罪者となり、不幸なルーツまで知る。負の連鎖。悪いほうへ悪いほうへとコトは運ぶ。

バッドはハッピーに置き換えてやり過ごしてきた主人公は、やがて「笑うしかない」ところにまで追い込まれる。道化は笑いながら泣き、笑いながら怒る。

喜劇と悲劇は人生の表と裏。


貧困層の富裕層への不満は高まり暴発寸前のゴッサム。支配者の圧が大きいほど被支配者のストレスは巨大になる。為政者が支配者となり被支配者の心は廃れ、暴力という発露を求める。

性善説に拠るのなら、悪は支配によって後天的に作られる。コミック史上最狂キャラクターのジョーカーに付された悲しすぎる過去。正義と信じていたものが覆されかねない緊急事態。

本作、やばいヤツ。


作品ごとに別人となるホアキン。本作の高評価は納得しかない。芝居を超えた骨の浮き出た身体にジョーカーが憑依したかの恐怖すら感じる。

ロバート・デ・ニーロ登場。ああいう役ということは展開も読める。大御所だけにどんなシーンになるのかドキドキ。隣人ソフィーを演じたザジー・ビーツは「デッドプール2」のドミノだった。


ジョーカーが後にバットマンの宿敵となるのは周知の通り。バットマンって単純な正義と違うよな、とは思っていたが、ジョーカーまでも単純な悪だと思えなくなる。なにせ本作の登場人物の中で一番いいやつがアーサーなんだもの。

コレは名作だが問題作。ノリで観るならやめたほうがいい。香港情勢のカオスが本作にリアリティを高めた。これが今のリアルだということか。これから観る方は「暴力の肯定ではない」ことだけは肝に命じておこう。



hiroでした。



脚本7 映像8 音響8 配役9 音楽9
41/50