WOWOW鑑賞

いつも一緒にいたあの子、誰だったんだろ。
チワワちゃん

監督・脚本:二宮健/原作:岡崎京子
出演:門脇麦/成田凌/寛一郎/玉城ティナ/村上虹郎/仲万美/吉田志織/松本穂香/栗山千明/浅野忠信

東京湾で女性のバラバラ死体が見つかる。被害者が一緒に遊んでいたチワワ(吉田志織)だと知ったミキ(門脇麦)は最近会う機会がなくなった仲間たちを訪ねては知らなかったチワワの素顔を探っていく。


しまった! 岡崎京子原作だったか! 「リバーズ・エッジ」にはまったくハマれなかった。未読なので原作のせいかどうかはわからないのだけど。冒頭で気付き、たどたどしく観続けてみる。

いきなりのバラバラ殺人情報。亡きチワワのことを語り始める主人公。パリピ仲間の輪に飛び込んできて引っ掻き回して去っていったチワワ。一緒にいたのにチワワのこと、どれだけ知ってたんだろう、と。



犯人探しではない。不自然なくらい犯人憎しの感情をみんな持っていない。チワワに対する同情や手放しに「好き」という感情すら見られない。それでいて許せないほど「嫌い」なわけでもない。

原作はずいぶん前の作品だけど、「一緒にいたのに本名も知らない」という人間関係は、SNSのユーザー名しか知らなくても仲良くなれる現代に通じてる。ドライだがアルアルな人間関係。


本作のアイコン・チワワの吉田志織。チワワ役にはパンチに欠けたがフワッとした空気は案外ハマってた。門脇麦はモヤモヤしっぱなしの役。そのモヤモヤが伝播するのだからやはり若手屈指の演技派。

成田凌寛一郎村上虹郎らクセの強い若手男優たちの存在感は凄い。今後幾度となくお目にかかることだろう。玉城ティナ松本穂香もいろんな役に挑戦しているのは好感。


序盤の疾走感からミュージックビデオみたいなパートもあり一見テンポが良い。が、一向にチワワの素顔には近づけずストーリーが展開しない。人間関係の希薄さの象徴がチワワなのだろう。

「リバーズ・エッジ」と似ているが、あの淀みはない。それはラストがすべて。

登場人物が本名を名乗り、仕事や出身地を告げる自己紹介。チワワは幻のような存在。でも私たちはここにいる。そして明日も生きていく。小さいけれど一歩一歩進んでいるメッセージが見られた。



hiroでした。