WOWOW鑑賞

原題「x+y」の答えは?
僕と世界の方程式

監督:モーガン・マシューズ/脚本:ジェームズ・グレアム
出演:エイサ・バターフィールド/レイフ・スポール/サリー・ホーキンズ/ジョー・ヤン/エディ・マーサン

自閉症スペクトラムと診断された少年ネイサン(エイサ・バターフィールド)はコミュニケーション能力がない一方で数学に関しては天才的な頭脳を持っていた。高校生になったネイサンは数学教師マーティン(レイフ・スポール)の提案で数学オリンピックの出場を目指すことになり、英国代表候補として台湾合宿に参加する。


伝えたい気持ちがある。伝えれば変化が生まれる。その変化は望んでいない変化かもしれない。「どう変化するか」に100%はない。ならば伝えないほうがいい。今のままで。

ところが、人間に100%確実なことはない。自分自身でさえ。欠けていても人間。欠けているから1人では生きられない。


マシューズ自身が制作したドキュメンタリー作品「Beautiful Young Mind」をベースにドラマ化。マシューズはこれが長編デビュー。

自閉症スペクトラムの少年が数学オリンピックと出会って勝利に向けて…という熱い話ではない。少年の成長である。挫折した大人の再生である。母と息子の絆である。

数学オリンピックそのものよりも、台湾合宿がキーである。予測を裏切る気持ちよさ。これは観てよかった。


ヒューゴの不思議な発明」のエイサくん。「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」でも健在ぶりを発揮し、順調に成長中。

サリー・ホーキンスの悩めるママには誰もが共感。スポールは主人公の一角を好演。エディ・マーサンは不可欠な英国俳優。


少年と教師と母、心に傷を持つ3人。今は亡き父、同じ自閉症の少年、家族のために数学に打ち込む中国人少女、挫折した教師を知る男…周囲の人々の計算された配置も絶妙。

なすべきことを見つけた少年。頭のいい息子に伝えることに気付いた母。傷と向き合う決心をした教師。それぞれが一歩を踏み出すラストが爽快。

「x+y」が思いもよらない答えになるから人間って素晴らしい。



hiroでした。