9本目(2月25日鑑賞)


宮廷で繰り広げられる人生の悲喜劇
女王陛下のお気に入り
 
監督:ヨルゴス・ランティモス/脚本:デボラ・デイヴィス/トニー・マクナマラ
出演:オリヴィア・コールマン/エマ・ストーン/レイチェル・ワイズ/ニコラス・ホルト/ジョー・アルウィン/ジェームズ・スミス
 
18世紀のイングランドは政治能力のないアン女王(オリヴィア・コールマン)に代わって幼馴染のサラ(レイチェル・ワイズ)が実権を握っていた。そこへサラの従妹で没落貴族の娘アビゲイル(エマ・ストーン)が仕事が欲しいと現れ、機転の効いた対応が認められ下働きから侍女に昇格する。アンの心は次第に政治に没頭するサラからアビゲイルへと移っていく。
 
 
人のために身を粉にして働いていても、そういうのって伝わらない。かと言って伝えたところで恩着せがましくなるだけ。そんなの自分が惨めなだけ。
 
実は案外伝わっていたりする。感謝もしてたりする。その感謝の表現こそ難しい。もっと素直になれたらいいのに。「ありがとう」って言えたらいいのに。
 
「ありがとう」と言われるのは心地よい。自分の価値を認められた気さえする。だから人にもたくさん言わなきゃと思う、ありがとうと。ただ、それが難しくて困る。
 
 
「誰のおかげで女王でいられるのよ」
「可哀想だと思って雇ってやったのは誰よ」
 
友人として接して政治は全面的に助けてあげてるのに「優しいアビゲイル」に靡くアン。助けの手を差し伸べたのにサラからアンを奪うアビゲイル。裏切られた挙句、馬に引きずられて傷だらけ。もお、サラが不憫。
 
感謝することを生まれながら知らない貴人。感謝することを忘れたオンナ。これは太刀打ちできない。エマを観にいったのに、いつの間にやらレイチェルサポーター。
 
 
ということで本作レイチェルが凄い。顔の傷さえ「女の勲章」。エマも負けてない。序盤の不幸キャラは嘘か真か。ウサギのアレはホラーよね。ニコラス・ホルトは演技幅をまた広げた。出演は正解。
 
オスカー女優オリヴィア。太っちょ、わがまま、甘えん坊。どこも共感できないキャラ。すべてはラストのため。後悔の表情が迫真。単なる三角関係で終わらせない、オリヴィアの凄さ。
 
ロブスター」のランティモス監督と知って「どうしよう」と躊躇。ところが「変」がマイルド。かなりふつう寄り。音楽は相変わらず不快(笑)。
 
 
アンはもちろん、サラもアビゲイルも実在。大奥みたいな愛憎劇。こういうことで国が動くのか。怖い怖い。

美術も衣装も最高の仕事。不穏な空気の中にもシニカルな笑い。変に史実に沿うよりも、ランティモス監督がハマってたのかも。

切り捨てたものは戻ってこない。大切なものほどだ。自分のことしか考えない愚かな二人の人生喜劇。一途な女の人生悲劇。見応えあり。


 
hiroでした。
 
 
 
脚本7 映像9 音響8 配役8 音楽8
40/50