NHK-BS鑑賞
磯川警部の恋物語
監督:市川崑/原作:横溝正史/脚本:久里子亨
出演:石坂浩二/若山富三郎/仁科明子/北公次/岸恵子/永島瑛子/高橋洋子/白石加代子/大和田獏/渡辺美佐子/草笛光子/辰巳柳太郎/小林昭二/三木のり平/岡本信人/大滝秀治/加藤武
岡山県警の旧友磯川警部(若山富三郎)に呼び出されて山陽の山村鬼首(おにこべ)村を訪れた探偵金田一耕助(石坂浩二)。折しも地元出身のスター千恵(仁科明子)の帰省で村は盛り上がっていた。磯川と再開した金田一は迷宮入りした20年前の事件の調査を依頼される。
企業でミスが発覚したとする。大ごとにはならずに済みそうだったりする。このまま黙っていてもバレることはないかもしれない。
とはいえ、どこから漏れるかわからない。バレたらどうするか。「大ごとではなかったので」…何を言っても言い訳。隠蔽まで疑われるのがオチ。
バレたら大ごとでなくても大ごとになる。ミスは許されるが隠蔽は許されない。ミスなんて誰にでもある。正直が一番。隠さないほうがいい。
隠そうとする人がいるからミステリーは成立する。隠したいのに蒸し返す人がいる。やばいと思い知ってる人を消す。一人消すとあいつも心配だから消す。連続殺人事件のできあがり。
本作にもひと握りの人しか知らない秘密がある。その秘密を守らなければならない。そうして事件という絵画はどんどん上書きされていく。
横溝正史ミステリーはその動機が核。時代が時代。何でも正直に言える環境ではない。だから、横溝作品の犯人はいつも悲しみを帯びている。
多くの役者が演じた金田一。過去作は実に多彩。ところが近年の金田一スタイルは同じ。市川崑と石坂浩二が作ったスタンダード。
仁科明子、高橋洋子、永島瑛子、フォーリーブス北公次、大和田獏というフレッシュ(当時)共演。草笛光子、渡辺美佐子、白石加代子…怖いくらいゴージャス。
「犬神家の一族」で磯川警部を演じた加藤武は別の刑事役。岡本信人、小林昭二、三木のり平、大滝秀治らチーム金田一も総出演。
再見。金田一といえば「犬神家〜」だが、本作、負けじと面白い。音楽の使い方がスタイリッシュ。緊迫展開の随所にコメディ要素も投入。特筆は「恋の話」。若山富三郎演じる磯川の淡い恋心が全編のベース。
開拓者市川崑が作品の色をソフトにした。ミステリーが「怖い」から「面白い」に。日本映画においてそのきっかけになった作品のひとつではないか。
hiroでした。