7本目(2月10日鑑賞)

 
音の魔法に酔う
ファースト マン
 
監督:デイミアン・チャゼル/脚本:ジョシュ・シンガー/音楽:ジャスティン・ハーウィッツ/原作:ジェイムズ・R・ハンセン
出演:ライアン・ゴズリング/クレア・フォイ/ジェイソン・クラーク/カイル・チャンドラー/コリー・ストール/キアラン・ハインズ
 
宇宙開発が激化した1960年代。アメリカはジェミニ計画からアポロ計画へと本格的な月面着陸ミッションが進められていた。宇宙飛行士の候補として参加していたニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は度重なる事故と犠牲の末、月面着陸を目指すアポロ11号の船長に抜擢される。
 
 
スクリーン鑑賞で重要視しているのは「音」です。純粋に映画音楽や音響のこと。「主題歌」はエンドロールのBGMや宣材としてしか意味がないことが多いので除外。
 
映画音楽とは場面イメージや登場人物の心情を表現する音楽。本来それで十分。が、ハンス・ジマーあたりから映像と音楽をリンクさせるなど、音響と音楽をひとつの演出として捉えることが増えた気がする。
 
映像は大型テレビやプロジェクターがあればある程度の迫力は確保できる。前後左右上下にスピーカーを配する音響だけは家庭での再現は不可。こればかりは劇場に行かないと。
 
 
試験機や宇宙船搭乗中の振動や衝撃。圧迫感と共に伝わる恐怖。4Dでもないのに観客も乗っているかのような疑似体験。スクリーンだからこその臨場感。
 
着陸船の扉を開けた瞬間からの「無音」が圧巻。生活の中には音がある。テレビを消して静かにしていても何かしらの音がある。一切の音がなくなった状態の何と不安なことか。
 
特別な機材なしに映像と音響だけで体験させる技術。ほんの1〜2分の無音を永遠にさえ感じさせる演出。本作には音の魔法が詰め込まれている。
 
 
ラ・ラ・ランド」に続くチャゼル作品主演のゴズリング。今回とても寡黙である。人類初の月面着陸とあの名セリフ以外は案外知られていないアームストロング船長の心象は数少ないセリフと演技から推して知るべし。
 
蜘蛛の巣を払う女」でリスベットを演じたクレア・フォイ。本作は寡黙な夫の語らない部分を補完。「宇宙飛行士のいる家庭」は彼女の演技で完成する。W主演と言っていい。ジェイソン・クラークは脇でいい味。
 

ライトスタッフ」〜本作〜「ドリーム」〜「アポロ13」という時代背景。アームストロング夫妻にスポットを当てたのも、単なる偉人伝に収めず好印象。ただし、説明不足で観る者の想像に任せるあたり、好き嫌いはありそう。
 
それでも「セッション」「ラ・ラ・ランド」と音楽にこだわってきたチャゼル監督。音楽は音の集合体である。本作、音にこだわり抜いた職人気質な作品なので納得。
 
エンタメ性は高くないけど映画作品として高評価。後日、ソフトで観るなら、今、スクリーンでの体験をオススメしたい。
 
 
 
hiroでした。
 
 
 
脚本6 映像10 音響10 配役7 音楽7
40/50