徐々にブログを以前の状態に戻しつつあります。映画鑑賞ペースは上がってませんが、WOWOWの撮りため作品をコツコツ観ています。下書きレビューもたまってきたので蔵出ししていきます。


WOWOW鑑賞

 
愛される価値
彼女がその名を知らない
鳥たち
 
監督:白石和彌/脚本:浅野妙子/原作:沼田まほかる
出演:蒼井優/阿部サダヲ/松坂桃李/村川絵梨/中嶋しゅう/竹野内豊
 
前の男黒崎(竹野内豊)に受けた仕打ちから立ち直れない十和子(蒼井優)は、一方的に十和子に尽くす陣治(阿部サダヲ)のわずかな稼ぎに頼って暮らしていた。ある事をきっかけに知り合った既婚者の水島(松坂桃李)と関係を持った十和子だったが、ホテルから出てきたところを陣治に見られてしまう。
 
 
アタシに愛される価値なんかない。愛されても応えてなんてあげられない。それでも愛を注いでくれるアナタ。なんでもしてくれるアナタ。やめて。重いから。
 
そんなアナタに甘えてる。なんでも許してくれるから。やっぱり愛される価値はない。ただ、アナタの差し出す手だけがアタシが生きている証。人でいられる実感。
 
 
十和子の恋する男たちが揃ってクズ。オンナを利用するクズは不要になったらポイ。遊びを愉しむクズは甘い言葉で翻弄する。
 
そんなオトコどもによって十和子の何かが壊れていく。厄介なのは、ひどい仕打ちにあってなお忘れられない十和子だ。そしてまた同じようなオトコに恋をする。
 
クズによって人生を台無しにされたオンナを描く一方で、十和子の中に潜む何かを描くサスペンス。十和子を演じた蒼井優の心情表現が凄まじい。
 
 
クズ男を演じた竹野内豊と松坂桃李。絶大な好感度を保ち続ける二人の役者のギャップに愕然。よくこの仕事を受けたもんだ。ナイストライに拍手。
 
W主演の位置付け阿部サダヲがうまい。出過ぎずに淡々と話を進めるのは中盤まで。それが終盤に大胆な方向に自らストーリーを動かす難役。
 
 
ラスト、無数の鳥たちが空に飛び立つ。空を見上げる十和子。どん底でもがいていた十和子が初めて上を向いた瞬間だったのではなかったか。
 
陣治の配置も使い方も秀逸。騙された。陣治の愛は正しくはない。それでも愛であることはまぎれもない。
 
 
hiroでした。