WOWOW鑑賞

 
木村拓哉の一分
武士の一分
 
監督・脚本:山田洋次/脚本:平松恵美子/山本一郎/原作:藤沢周平
出演:木村拓哉/檀れい/笹野高史/岡本信人/左時枝/綾田俊樹/赤塚真人/近藤公園/大地康雄/小林稔侍/緒形拳/桃井かおり/坂東三津五郎
 
藩主の毒味役として代々家禄をもらっていた三村家の当主新之氶(木村拓哉)は妻の加世(檀れい)と二人で慎ましく暮らしていた。ある日のお勤めでつぶ貝の毒に当たってしまった新之丞は一命を取り留めるも視力を失ってしまう。
 
 
部長さんから「ゴルフやらないの?」とよく言われる。ゴルフをやるのが部長への近道なのだそうだ。やったことないので好きでも嫌いでもない。やれば楽しいのかもしれないけど、思うんですよ、そんな理由で始めていいのかと。
 
部長になりたくない?…ん〜少し違う。部の顔ぶれ見ると(天狗ですが)やれと言われれば受けざるをえないと思う。ただね、ゴルフに使う時間がもったいないし、ゴルフで昇進したとも言われたくないしね。
 
バカかもしれないけど、譲れない一線ってあるんだよね。
 
 
弱みに付け込まれ女房を手篭めにされた新之丞。腹わたが煮えくりかえる心地だろう。身分第一の社会。上司の不正を質すにも一命を賭す覚悟。たとえ理不尽でもそういう時代。今の価値観とは違う。
 
武士の一分。文字通り命をかけても譲れない一線である。たかがゴルフと比べては新之丞に申し訳ないが、譲れないものは譲れないのだから仕方がない。
 
 
木村拓哉はうまいと思う。他作の一本調子はそれを求められるから…または遠慮してNGが出ないから。使いこなせる監督がなかなかいない。山田監督の演出による名演は必見。
 
中間役笹野高史は超安定。本作で各映画賞の助演男優賞受賞。坂東三津五郎は敵役。歌舞伎役者がハラスメントオヤヂ役というのも珍しい。同僚役の赤塚真人が絶品。
 
 
藤沢周平の短編を山田洋次が映像化。シンプルななかに武士のリアリティを凝縮した渾身作。そこにキムタクを配したことが注目されたのは人気者ゆえ仕方ない。
 
無精で伸びた月代と髭。見た目カッコよくないキムタクを見せてくれた意味は大きい。彼にとっての役者の一分だったのかと。
 
 
hiroでした。