56本目(12月19日鑑賞)


人の闇があれを生む
来る
 
監督・脚本:中島哲也/脚本:門間宣裕/原作:澤村伊智
出演:岡田准一/妻夫木聡/黒木華/志田愛珠/小松菜奈/青木崇高/柴田理恵/太賀/伊集院光/石田えり/松たか子
 
仕事も順調、結婚して子どもにも恵まれた秀樹(妻夫木聡)だったが、イクメンパパな表面とは裏腹に家族は崩壊に向かっていた。そんな折、会社の後輩が不可解な死をとげ、秀樹は異様な空気を感じ始める。幼い頃のある体験との関係が気になり、民俗学者の友人津田(青木崇高)に相談するとオカルトライターの野崎(岡田准一)を紹介される。
 
 
誰だって人からよく見られたいじゃん。そのために多少盛るくらいはありでしょ。嘘? あんなの嘘のうちに入らないよ。…そんな男の前にあれは来る。
 
実母の奇行、夫の無神経、娘も言うことをきかない。イライラ。もう、あたしの好きにするの。夫や母のせいだから。…そんな女の前にもあれは来る。
 
あれは弱い者に来る。弱みを持つ者に来る。後悔している者に来る。
 
 
弱くない人なんているのか。弱みのない人、後悔したことがない人なんているのか。つまり、あれがつけ込む隙は誰にでもある。そうなると、あれって何なんだろう。

都合悪いことを妖怪や幽霊のせいにする。津田の説が案外的を射ているのかもしれない。負の思念がやがて「意思」となりあれが生まれる。…なんて仮説を立ててみたり。
 
告白」(松たか子主演)、「渇き。」(小松菜奈主演)で人の心の闇や二面性を描いた中島監督。ホラーを題材にした本作のテーマも同じだと思う。「あれが何か」は大きな問題ではない。
 
 
役者のみなさんが揃ってグッジョプ。
 
好青年と嫌な奴を作品ごとに演じ分ける妻夫木くん。本作中で両方の楽しめる贅沢。自分を嫌な奴だと思っていない嫌な奴っぷりが最高。黒木華の巧者ぶりも目が離せない。この2人の安定感は衆知の事実。
 
トップクレジットながら冒頭15分は出番がない岡田くん。華もあり汚れもできる日本映画界の至宝。青木くんも持ち場を確保した感。話題の柴田理恵は噂の通り柴田史上最強のカッコよさ。
 
 
菜奈ちゃんが菜奈ちゃんだと言われてなおわからない変貌ぶり。役どころも重要で出ずっぱり。共演者松たか子に共鳴し、ふた皮くらい剥けた勢い。最強霊媒師琴子役の松さんはラスボスの貫禄。

琴子率いる霊媒師軍団のドッカーンな除霊で幕。おしゃべり好きなおばちゃんも、重役みたいな爺さんも、自撮りではしゃぐ女子高生もみんな霊媒師だったり祈祷師だったり。除霊が始まればライブエンターテインメントの興奮。
 

ホラーで展開し、エンターテインメントで終える。しかし、根底にあるのは人の闇。あのキャラこのキャラが実に不愉快。その不愉快の中に自分の嫌な部分を重ねてしまったり。ゾワゾワと「来る」匙加減が中島監督のいやらしさ。これはこれでホラー。

「怖いけど面白い」というコピー。そうなんだけど、映像は刺激強め。ホラー慣れしてない方は甘くみないほうがいい。

何気に序盤の秀樹の友人たちの陰口が怖い。


 
hiroでした。



脚本7 映像9 音響9 配役8 音楽8
41/50