WOWOW鑑賞 ジジイたちの憂鬱③


噛み合ってないように見える父と娘
ありがとう、
トニ・エルドマン
 
監督・脚本:マーレン・アデ
出演:ペーター・ジモニシェック/ザンドラ・ヒューラー/ミヒャエル・ヴィッテンボルン/トーマス・ロイブル/イングリット・ビス/トリスタン・ピュッター
 
ドイツで老犬と暮らすヴィンフリート(ペーター・ジモニシェック)は、遠くルーマニアで働く一人娘のイネス(ザンドラ・ヒューラー)の様子がおかしいことに気づく。犬の死をきっかけに休暇をとってイネスの職場を訪れるヴィンフリート。久しぶりに過ごす父と娘の時間だったが、イネスはいつも仕事のことが頭を離れなかった。
 
 
余白を想像で埋めるのが映画。本作、説明一切なし。とても映画的…ってか想像を働かせないと置いてかれる。想像できてもそれが正解かどうかはわからない、という。
 
本作にはいろんな暗喩が仕込まれてる気もする。企業のあり方、人の生き方、貧困。不況真っ只中のEUだけに何かありそうだが、詳しくないのでよくわからない。
 
「おまえは人間か」…すご味があって意味深なセリフよね。
 
 
冗談ばかり言っている父。笑っていいのかわかりづらい人。そんな父だから、娘へのケアも独特。娘も慣れたもの。この阿吽が父娘ドラマとしてのベース。
 
説明がないので以下は推定の設定。父は離婚している。娘とも疎遠。定年してボランティア的な仕事をしている。娘は父をうるさいと思いながらも嫌いではない。
 
そんな父と娘の噛み合ってないようでしっくりくる日常が淡々。
 
 
仕事に追われるイネス。なかなか成功している様子。ただ心は満たされていない。そこに敏感に気づく父。そんな父のお節介がウザくもあり、嬉しくもあり。
 
脱ぎも着れもしない服にキレるイネス。挙句の例のパーティー。切羽詰まった感覚と共に「父の血」を連想させるエピソード。母娘とも違う父娘の関係性。描いてるのが女性監督というのが軽い驚き。
 

変なパパなのだがパパの「心配」はよく伝わる。それでもNOと言わないのは娘への信頼。一方の娘も結末でほんの少し方向性を変えている。これもまた父の影響。

余計な説明がないって、観る人を信用してくれてるみたいで嬉しくもある。説明のがないのが苦手な方にはつまらないです。諦めましょう。



hiroでした。