WOWOW鑑賞 ジジイたちの憂鬱①


ご機嫌ななめなオーヴェの微笑み
幸せなひとりぼっち

監督・脚本:ハンネス・ホルム/原作:フレドリック・バックマン
出演:ロルフ・ラスゴード/イーダ・エングボル/バハー・パール/フィリップ・バーグ/カタリナ・ラッソン

妻のソーニャ(イーダ・エングボル)に先立たれ、仕事もリストラされたオーヴェ(ロルフ・ラスゴード)。厳格な彼はいい加減な近所の住民にも嫌気がさして妻の後を追うことばかり考えていた。まさに首を吊ろうとしたそのとき、隣家にパルヴァネ(バハー・パール)と彼女の家族が引っ越してくる。


なかなかの頑固オヤジ。近所にいたら関わりたくはない。それが徐々に心を開いていく話…なのだが、心開かないまま上映時間は過ぎていく。

厄介なオヤジをそれでも見捨てない隣人パルヴァネ。2人の子を産み3人目の妊娠中。彼女に一目置くオーヴェ。実はこの設定が効いている。


オーヴェの人生は不幸だと言える。自暴自棄になるのも納得。愛妻に先立たれた晩年は、わずかな幸せの記憶にしがみつき生きる…いや、死のうとしている。

ヘビーな状況なのに本作とても軽妙。オーヴェの悪あがきを滑稽に描くコメディ。やがてオーヴェはソーニャの遺したものに生かされていることに気付く。


長身ラスゴード、本国ではビッグネーム。若きオーヴェ役の俳優も雰囲気がある。エングボルはテレビや舞台で活躍。ヒラリー・スワンクな顔立ちでとてもチャーミング。

隣人パールはイラン生まれのスウェーデン育ち。本作のキーパーソン女優は監督もこなす才女なのだとか。


住宅団地的な地域なのかな。「隣人」との関係が本作のキモ。捨てキャラと思われた面々も徐々に存在感を増す。猫さえも。そんな人情をオーヴェの過去とともに引き出す脚本がうまい。ひとりぼっちは幸せじゃない。邦題センスは疑問。

一人ではできないことも寄り添えばできる。それがわかったからこその満面の笑み。幸せな最期。扉をカチッと閉め直すおチビちゃん…素敵なラスト。意外と人は、簡単には嫌われないものなのかも。



hiroでした。