49本目(10月19日鑑賞)

メッセージは「生き方」
日日是好日

監督・脚本:大森立嗣/原作:森下典子
出演:黒木華/樹木希林/多部未華子/山下美月/鶴田真由/鶴見辰吾

就活を控えた大学生の典子(黒木華)は親の勧めで従兄弟の美智子(多部未華子)と共に茶道を習うことになる。先生は近所でも一目置かれる武田(樹木希林)。しきたりばかりの茶道の決まりごとに疑問を抱く二人だったが「そういうものなの」と一蹴される。


職場でイラッとすることが多く、カリカリしていた。そうしたタイミングでこの作品を観る機会を得る。必要な時に必要な作品が現れる。映画って素敵だと思う。

茶道のことは何も知らないところへ袱紗のたたみ方のご教示。チリ打ちの音でハッとさせられた後は、あれよあれよと武田先生のペースに巻き込まれていく。主人公だけでなく、実は観ている我々もそう。

伝えているのはお茶のウンチクに見えてそうではない。「ニチニチ コレ コウジツ」という「生き方」である。


本作、音にこだわる。四季折々の自然が奏でる音。その音を探して愛でる…ではなくそこにある音に身を委ねる。自然をどうこうするのではなく、あるがままを受け入れる。生きるとはそういうこと。

イニシアチブを自然に委ね、イマジネーションを膨らませると、ちょっとしたユーモアを楽しむ余裕ができる。「風流」という言葉が近いのかな。文字を「見る」という視点、なるほど面白い。

自然と共に生き、人生を楽しむ。茶道ってそのアイテムのひとつなのかな、と茶道素人は思ってみたり。


希林さんの遺作になるのでしょうか。彼女の語るセリフの一つひとつが金言。主人公を導く師の役どころなのだが、作品の空気を作り上げてしまうのは希林さんの実力。

未華子ちゃんは思いのほか出番少なめ。なのに十分すぎる存在感でいい仕事。外から見えない内なる変化を体現した華ちゃん。わかっているけど改めて…若手屈指の演技派だわ。希林さんとの共演は貴重体験。今後絶対プラスにする人。

鶴見辰吾鶴田真由山下美月のエピソードはもっと掘り下げられる。尺の都合なのでしょう。原作エッセイには詳しいのかな、と気になっている。



すぐにわかるものとそうでないもの。人はわかりやすいほうに靡きがち。時間をかけてわかるものには深みがある。そんなものをひとつくらいは突き詰めたい。わかりやすいものばかりに囲まれて生きていては、きっと浅い人になる。

流れのままに生きてきた、ように見えるひとりの女性。ところが20年以上お茶を続けてきた彼女には、周りには見えない刺激や変化があった。あえて「すぐにはわからないもの」を2時間足らずの映画作品にしたのも、また風流(笑)。

希林さんへの哀悼抜きで、これはとても綺麗な作品。大好き。希林さんありがとう。



hiroでした。



脚本8 映像8 音響10 配役10 音楽7
43/50