46本目(9月14日鑑賞)
響が実在したら厄介だ。触れられたくないところをグイグイ突いてくるのだから。ただ、嫌だから避けていていいのか。折り合いをつけるのは正しい。が、折り合いをつけながら自分を見失ってはいけない。
響はあなたのなかに
監督:月川翔/原作:柳本光晴/脚本:西田征史
出演:平手友梨奈/北川景子/アヤカ・ウィルソン/北村有起哉/柳楽優弥/野間口徹/板垣瑞生/高嶋政伸/吉田栄作/小栗旬
文芸雑誌の新人賞応募作品から類い稀な才能を見つけ出した編集者花井(北川景子)は応募者鮎喰響(平手友梨奈)からの連絡をひたすら待っていた。人気作家祖父江秋人(吉田栄作)の自宅で祖父江の娘凛夏(アヤカ・ウィルソン)の友達だった響と偶然出くわした花井だったが、響の奇行に振り回されることになる。
100%清く正しくクリーンに生きている人はいない。誰もが社会のルール、業界、会社、学校のルールのなかで折り合いをつけて生きている。自分が正しくないと知りつつ折り合いをつけていることを指摘されたとき、人はたじろぐしかない。
響の刃は容赦なく切りつける。その切っ先を突きつけられた者は否応なく自分の「個」と向き合わされる。凝縮された「個」の象徴が響だ。
本作を観て響いた方はふつうだと思う。逆に他人事として観ている方は、響同様100%クリーンに生きているか、折り合いをつけているうちに自分を見失ってしまったか。おそらく前者はほとんどいない。
響のように生きるのが正解なのか。否。人は一人では生きられない生き物。ルールがあるのは当たり前。まして暴力で正すのは愚。響はアンチヒーローだと言える。
映画界は平手友梨奈という才を手に入れた。その存在感…オーラとでも言うべきか。平手で当て書きしたような響というキャラクターがはまり役。
「パコと魔法の絵本」以来の久しぶりのアヤカ。折り合うことで生きてきた人生を揺さぶられ自分を見つめ直す難役。お見事。
北川景子、北村有起哉、柳楽優弥、小栗旬。大人たちが15歳の少女に切り込まれ、目覚めていく好演。目覚めない野間口徹も好演。
響が実在したら厄介だ。触れられたくないところをグイグイ突いてくるのだから。ただ、嫌だから避けていていいのか。折り合いをつけるのは正しい。が、折り合いをつけながら自分を見失ってはいけない。
「それでいいのか?」と声がする。それがあなたのなかの「響」。そう、「響」はあなたのなかにいる。いないといけない存在なんだと思う。
hiroでした。
脚本8 映像8 音響8 配役8 音楽8
40/50