WOWOW鑑賞 リリー博覧会③


タナダユキの流の優しさ
お父さんと伊藤さん
 
監督:タナダユキ/原作:中澤日菜子/脚本:黒沢久子/音楽:世武裕子
出演:上野樹里/リリー・フランキー/長谷川朝晴/安藤聖/渡辺えり/藤竜也
 
年の離れた伊藤(リリー・フランキー)と同棲している彩(上野樹里)。ある日、兄の潔(長谷川朝晴)から「お父さん(藤竜也)と暮らしてほしい」と相談される。2人暮らしだからと断った彩だったが、アパートに帰ると兄の家を出てきたお父さんが来ていた。
 
 
これ好き!
 
hiroは伊藤さん世代。この伊藤さん、静かな立ち居振る舞いながら本作のヒーロー。お父さんと娘の真ん中世代という設定が効いている。リリーさんを当てたのも絶妙。
 
彩と潔の兄弟目線、お父さん目線、双方から見て公平なのもポイント。どちらに偏ることもないので、あらゆる世代の方が観ても嫌味がない。
 
 
彩にとってお父さんは「面倒な年寄り」。義務であれこれしてあげている。正直、hiroもそういう気持ちはそれなりにあった。
 
ところが藤さん演じるお父さんの叫びにハッとする。「面倒だ」と思われていることは年寄りにもわかる。でも、今さら変えられないんだよね。
 
双方の気持ちがわかる50代。彩と潔とお父さんの3人にとって、伊藤さんは守護天使のような存在ではなかったか。
 
 
本作はツンケン型の樹里ちゃん。年齢設定より少し子どもな演技。大人になっても親の前では子どもなんだよね。樹里ちゃん差し置き実質主演のリリーさん。人がよいのに素性がミステリアスなあたり適任。
 
藤さんは「〜じゃないのかな」が口癖の元教員。風貌がhiroのリアル父を彷彿させてしんみり。円熟期の演技で助演男優賞レベル。たまにしか見かけない長谷川くんもよかったなー。
 
 
監督はタナダユキ。なるほどだ。「四十九日のレシピ」「ロマンス」…感動作じゃないけど「ふ〜」っと肩の力が抜ける。瞳が潤んでいることもある。タナダ監督は視点が優しいのです。
 
最後、「え〜、そんなオチなの〜?」という展開。でも大丈夫。伊藤さんが救ってくれるから。



hiroでした。