8本目(1月29日鑑賞)
50年を経た今、何か変わったのか
デトロイト
監督:キャスリン・ビグロー/脚本:マーク・ポール/音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ジョン・ボイエガ/ウィル・ポールター/アルジー・スミス/ジェイソン・ミッチェル/ジャック・レイナー/ベン・オトゥール/オースティン・エベール/ジェイコブ・ラティモア/ハンナ・マリー/ケイトリン・デヴァー/ネイサン・デイヴィス・Jr/ペイトン・アレック・スミス/マルコム・デヴィッド・ケリー/ジョン・クラシンスキー/アンソニー・マッキー
1967年7月、デトロイト。黒人兵の帰還を祝うパーティー会場を警察が襲ったことをきっかけに黒人市民の暴動が発生。軍も介入したデトロイトの街は戦場と化す。一軒のモーテルから発砲があったとの連絡を受け、クラウス(ウィル・ポールター)ら警官が駆けつける。近くの商店の警備をしていたディスミュークス(ジョン・ボイエガ)が様子を見に現場に現れた時は、宿泊客が警官の銃口を背に壁を向いて整列させられていた。
実話。67年7月といえばhiroがちょうど1歳。記憶にないのは当たり前。が、これはホントに50年も前の事件なのか。警官・黒人・暴行…今も耳にするニュースではないか。
資料を当たり、プロットを作り、イメージした人物を当てはめる。重いテーマをエンタメという枠組みに収める手腕。ビグロー健在。
失態を埋めるために狙撃者を挙げたいクラウス。その行為は常軌を逸脱し、差別主義者の象徴のように描かれる。あえて人物を掘り下げずに事の次第を並べていく。故にクラウスの「行為」が浮き彫りになり、狂気と恐怖を生む。
掘り下げないことは、黒人たちを一方的な被害者とする効果もある。撃ったのは誰かを知っている。しかも、トイガンでだ。それでもカール(ジェイソン・ミッチェル)の名を出さない。彼らの中にも白人嫌い・警官嫌いが定着しているということか。
少し違った見方をしてみる。クラウスらは悪だ。では悪いのは彼らだけか。ノーだ。クラウスに限らない。彼らはそういう環境で育ったから、それが「ふつう」。南北戦争以前から、何代にもわたる血なのではないか。
そんなクラウスを擁護する弁護士(ジョン・クラシンスキー)。仮に彼を差別主義者としても仕事だから百歩譲る。無罪判決を下した陪審員。基本的に一般人。実はこの存在が一番怖かったりする。
「人権に関わることは御免」と警官と距離をとる州兵。彼らは差別主義者でないにせよ、最も問題な「傍観者」である。疑問を抱きながら、何の抵抗もしなかったディスミュークスも傍観者に近い立ち位置。
非がある黒人たちがいることも事実。これはまさに時代が生んだ悲劇。残念なことにその時代、まだ終わってはいない。
最後にキャスト。目を見張ったのはポールター。若い頃(今も若いけど)嫌な役含めいろいろ演じてきた。こういう極めて嫌な役で光る。素晴らしい。ポスト・ベーコン確定。
その他初めてみる方多数。みなさん迫真の恐怖が見事。特にボーカリスト・ラリー役のアルジー・スミスが出色でほぼ主人公。そして何より歌が超絶うまい。ラストの歌唱が心に滲み入る。
hiroでした。
脚本8 映像8 音響8 配役9 音楽8
41/50