4本目(1月9日観賞)FP 18
コメディに分類した。が、終盤まで延々とキャンバスを挟んでのやりとりが続く。そしてラストのオチ。このオチで90分の作品全体が上質コメディとなる秀逸さ。これは大好き。そう、芸術に完成はない。締め切りはあるけども。(笑)
芸術に完成はないが締め切りはある(笑)
監督・脚本:スタンリー・トゥッチ/原作:ジェイムズ・ロード/音楽:エヴァン・ルーリー
出演:ジェフリー・ラッシュ/アーミー・ハマー/クレマンス・ポエジー/トニー・シャルーブ/シルヴィー・テステュー
20世紀を代表する彫刻家アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)に肖像画のモデルを頼まれたアメリカ人編集者のジェイムズ(アーミー・ハマー)。2〜3時間で終わると言われて引き受けたジェイムズだったが、気まぐれに中断するわ、愛人カロリーヌ(クレマンス・ポエジー)に邪魔されるわで一向に作業が進まず、帰国便の変更を繰り返すことになる。
スタンリー・トゥッチが監督だ。過去何作か撮っているようだが知らなかった。どんな作品を撮るんだろう。フリパで観てみた。
重そうなタイトル。ジャコメッティが最後に描いたポートレートに込められた思いは…的なアート系かと予測したら大外れ。なんとも軽妙で洒落た作品を撮るではないか。
アルベルト・ジャコメッティ。よく知らなかったので調べてみた。1901ー1966年。彫刻家・画家・版画家。スイス生まれで主にフランスで活躍。おそらく細長い人物のブロンズ像を見たことはあるだろう。ジェイムズ・ロードも実在の人物で、本作は彼の著書を原作としている。
物語は1964年の出来事としているのでジャコメッティの晩年に当たる。セリフにも出てくるようにピカソなどと同時代。劇中出てくる伊作も実在の日本人哲学者矢内原伊作。
ラッシュの器用さ。似てるかどうかはなんとも言えないが、芸術家は然もありなんな佇まい。このラッシュ演じるジャコメッティが憎めない。怖そうなのに、だらしないのに、妻の前でも愛人といちゃつくのに。
ハマー好きな方に朗報。全編出ずっぱりな上に、ハマーのドアップ盛りだくさん。このハマー演じるジェイムズも絶妙。困り果ててるのにジャコメッティとのセッションにハマっていく。助演男優賞をあげてください。いや主演でもいい。
愛人役ポエジーに見覚えがあった。「ハリー・ポッター」シリーズのフラー役だった。ジャコメッティの弟ディエゴ役トニー・シャルーブがいい味。妻役シルヴィー・テステューもよくって、出てる方みなさんがよい演技。
堅苦しくなく芸術に触れた気分にさせてくれる本作。興味を持っていただければ幸い。どこでも観れるわけではないようだけど、ソフト化されてからでもOK。おススメです。
私事で恐縮。以前、小説を書いて賞に応募したことがある。やっとの事で完成しても、読み返すたびに修正点が出てくる。ここはこっちのほうがいい、と。それがいつまでも終わらない。結局締め切り直前まで直してた。
一生懸命になるほど世の中そういうものらしい。完成しないから次に進める。
hiroでした。
脚本8 映像8 音響6 配役10 音楽7
39/50