WOWOW鑑賞 来日&もうすぐ新作記念①
 
侍たちが守ろうとした美しいもの

ラストサムライ

 

監督・脚本:エドワード・ズウィック/音楽:ハンス・ジマー

出演:トム・クルーズ/渡辺謙/真田広之/小雪/小山田シン/池松壮亮/福本清三/原田眞人/ティモシー・スポール/ビリー・コノリー/トニー・ゴールドウィン/中村七之助

 

南北戦争の雄オルグレン(トム・クルーズ)は、戦後、武勇伝を語って聞かせては生活費を得ていた。そんな生活に嫌気がさしていた彼の元に、日本政府から西洋式軍隊の調練の依頼が来る。日本に来て早々、未熟な軍を率いて政府の抵抗勢力である勝元(渡辺謙)の軍と交戦。政府軍は敗れ、囚われたオルグレンは勝元らの村に連れて行かれる。

 

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美しい映画!
 
再見して改めて思う。監督はじめスタッフの方々、日本をよく理解されている。我々が失い、失ったことの意味にすら気付いていないもののことを。
 
史実と違う云々。モデルは誰で、どの戦争なのか、なんとなくわかる。が本作、実話ではない。本作のテーマは史実は一切関係ない。
 
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騎馬と刀による戦闘にこだわる侍を火力で蹂躙しようとする政府軍。この時代、戦争の勝敗を決するものは火力となっていた。より多くの銃器を保有したほうが勝ち。そして勝者は単に勝っただけであり、必ずしも大義があるとは限らない。

 

価値観が変わる瞬間。米国の南北戦争、欧州の産業革命、そして日本の明治維新。世界中がその熱に煽られていた。そうしたなかで古きものを守ろうとする侍。「意地」と受け取ると彼らの守ろうとしたものは見えない。

 

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「武士道」はその象徴にすぎず「刀」もその形骸に他ならない。
 
豊かな自然である。自然が与えてくれる恵みである。大地に根を張った生活である。生活を守るための人々の営みである。本作の侍たちが守ろうとした美しいものを映し出す映像がみずみずしい。
 
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一歩も二歩も引いて日本人俳優を立てたトムの立ち位置に感服。渡辺謙や真田広之は、欧米人にどれ程美しい光を見せたのか。それはその後のハリウッドでの活躍でわかる。

 

小雪が三歩後ろを歩く好演。中村七之助はフィクションと割り切らないとできない難役。敵ボスは原田眞人監督だし。見たことある子がいたと思ったら池松壮亮少年だった。

 

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火と鉄による文明は便利さとともに兵器を生む。兵器は力となる。力は大義と美しいものの数々を粉砕する。原子力=核を連想したのは飛躍しすぎか。
 
明治維新から戊辰戦争、西南戦争の流れは美しいものばかりではない。既得権益に固執する醜悪な感情もあったはず。本作はフィクション。これらのなかから純度の高いものをかき集めた「美しい作品」。
 
美しい戦争などない。ただ言えるのは、大義も何もない戦争は渇望しかない。
 
 
 
hiroでした。