WOWOW鑑賞 闘うオンナ③


ミステリーと思って観ると道に迷う
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ニュースの真相
 
監督・脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト/原作:メアリー・メイプス
出演:ケイト・ブランシェット/ロバート・レッドフォード/トファー・グレイス/エリザベス・モス/ブルース・グリーンウッド/ダーモット・マローニー/ステイシー・キーチ/デニス・クエイド
 
米三大ネットワークのひとつCBSのニュース番組「60ミニッツ」のプロデューサー・メアリー(ケイト・ブランシェット)は、大統領選直前のブッシュの軍歴詐称を決定付けるメモを入手する。アンカー・マンのダン・ラダー(ロバート・レッドフォード)ら番組スタッフとの地道な取材で関係者の証言を取り付け、放送まで漕ぎ着ける。彼らのスクープは衆目を集めるが、翌日、公表されたメモが捏造されたものだとの噂が流れる。
 
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ジャーナリズムとは何か。

…なんていう硬い言葉が出てくるのはマスメディアの端くれで仕事をしているからかな。予告の印象は真実を追求するサスペンス。蓋を開けてみるどうも違う。

軍歴詐称の突破口となったメモ。ビッグ・スキャンダルに沸いたはずの大衆の関心は、一夜にしてメモの信憑性に取って代わり、軍歴詐称はうやむやに。

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テーマは危機に直面したときのマスメディアとジャーナリストの対応だ。マスメディアはCBS…つまり企業。ジャーナリストはメアリーやダン…つまり個人。

保身、パワーバランスに走るのは企業のさだめ。経営者には社会への、従業員への責任がある。その企業に雇われるジャーナリストは企業への責任、社会への責任、そして個人のプライドの狭間で葛藤する。

それでも「腐っても鯛」。あの人この人のケジメが小気味よい。

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実話。メアリー本人の手記が原作。軍歴詐称はクロだという決定打がない一方、シロだとも証明できない。そんな中での映画化。もっと偏ってると想像したが、思いのほか公平。

レッドフォードがとんでもなくいい。老けたし、シワだらけ。だけど歳相応。今の彼だから発揮できる最高の輝き。ケイトもいい。父の呪縛が未だ解けないメアリーにとってダンは父の代わり。その距離感や空気感もケイトのキャリアの賜物。トファー・グレイスの告白とタンカにも痺れた。

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政府が目の上のタンコブCBSを嵌めた、という陰謀説もある。hiroは①選挙前にメモが流出し、②メモ捏造疑惑を煽るが失敗、③奥の手で証人の発言を覆す…なんていう政府の単純なミスと帳消し作戦かと。…hiroの感想にすぎないけど。

※以下わたくしごと。

hiroの仕事は編集者。「ウラをとる」って実は底なし。どこまでやれば安全…という基準はない。足をすくおうと思えばいくらでも手はある。本作は編集者にとって怖い話。メアリーにミスがあったとしても、やはり彼女に肩入れしてしまう。

本作、ミステリーではない。右だ左だ、の政治傾向の話でもない。「質問をしなくなったら、この国はおしまい」という話。


 
hiroでした。