78本目(11月19日鑑賞)
聖と羽生の対局、マツケンと東出の対決
監督:森義隆/原作:大崎善生/脚本:向井康介/音楽:半野喜弘
出演:松山ケンイチ/東出昌大/染谷将太/安田顕/柄本時生/鶴見辰吾/筒井道隆/リリー・フランキー/竹下景子
幼少期にネフローゼを患って入退院を繰り返していた聖(さとし)は、将棋を入院中の慰めとしていた。腕を上げて15歳でプロ棋士の森(リリー・フランキー)に弟子入りした聖(松山ケンイチ)は「東の羽生善治、西の村山聖」と呼ばれるようになる。同世代の羽生(東出昌大)との対戦のため拠点を東京に移した頃、膀胱癌を発症した聖は、命を削る日々が続く。
将棋に全てを捧げる羽生に対し、聖は恋に漫画に散漫な印象。残された時間の違い。残されたわずかな時間に一生分の青春を謳歌しようとする聖の姿は人間くさい。その上、羽生にも勝ちたい。貪欲さが「聖の青春」。マツケンの渾身。
聖を掻き立てる羽生。天才肌でストイックで鼻にかけたところがない。将棋の世界は強ければいいわけではない。
実は、東出の演技をうまいと思ったことがない。ところが本作、実に絶妙。圧巻は対局。盤を間に聖との鍔迫り合い。羽生の目線、姿勢。彼には盤面を縦横に動き回る駒が見えている。それが伝わる静かで壮絶な佇まいに震える。
マツケン聖に触れた東出の覚醒。一歩前に歩を進めた瞬間。脇に回った筒井道隆が最近グイグイ来てる。柄本時生も観る度に成長。安田顕、染谷将太も持ち味発揮。リリーさんには文句のひとつも出やしない。
ところが…病気のこと、村山九段のことを知らない人にはもどかしい。どういう病気なのか。聖は何故、治療もせずに暴飲暴食を続けるのか。回想を挟んではいるが、「体調がいい日なんてないんですよ!」の悲痛が伝わらない。
「村山対羽生」にとらわれすぎて、フォーカスがぼやけた。病気を薄くしちゃいけない話だと思うのだが。
名作要素がいっぱいなのに、惜しい。映画って魔物だ。
hiroでした。
脚本5 映像8 音響8 配役9 音楽6
計36/50