HDD鑑賞


子どもが笑顔を失う…辛い
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黄色い星の子供たち


監督・脚本:ローズ・ボッシュ/美術:オリヴィエ・ラウー/衣装:ピエール=ジャン・ラロック

出演:メラニー・ロラン/ユーゴ・ヴェルデ/ガド・エルマレ/ラファエル・アゴゲ/オリヴィエ・シヴィ/マチュー&ロマン・ディ・コンチェート/アンヌ・ブロシェ/ティエリー・フレモン/ジャン・レノ


ナチス支配下のフランス。衣服にユダヤの印を強制されながらも、シュムエル(ガド・エルマレ)、スーラ(ラファエル・アゴゲ)夫婦は仲睦まじく、ジョー(ユーゴ・ルヴェルデ)、シモン(オリヴィエ・シヴィ)らユダヤの子たちも笑顔を絶やさずに暮らしていた。1942年7月、ナチスはフランスに対し2万4000人のユダヤ人を差し出すよう要求。16日未明、悪夢の一斉「検挙」が始まり、ジョーの住む地域の住民もヴェル・ディヴ競輪場へ移送された。ユダヤ人医師シェインバウム(ジャン・レノ)の要請で赤十字から派遣された看護師アネット(メラニー・ロラン)は、ヴェル・ディヴの惨状を目の当たりにし、愕然とする。


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傑作なのに、辛くて何度も観れない作品がある。本作、辛い。


ナチスだけじゃなく、フランスにも不快感。戦後50年、ヴェル・ディヴの惨劇はナチスの大虐殺だとシラをきったフランス。実際に担った役割は一切口を閉ざしたフランス。1995年、ようやく政府が認め、公表された史実。入念かつ慎重な取材の末、丁寧に描いた力作。


ナチスとフランスの交渉経緯が興味深い。ユダヤ人の数の問題。何を数えているのか麻痺してくる。それは人の命の数ではないのか。迫害に苦しめられる人々と、優雅にカクテルなど飲み交わすかの人物との対比も苦痛。


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物事には表裏がある。ユダヤ人迫害の一端を担ったフランス政府。一方市井では、政府の誤りに気付いている市民がいる。ユダヤ人を守ろうという市民がいる。


拘束されたユダヤ人に水を与え、家族への手紙を託されたフランス人消防士の心意気に打たれる。ユダヤの子供たちの支えになろうとした看護師に癒される。政府の非人道的政策に反した勇気あるフランス人がいたことも事実。

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ローズ・ボッシュ監督のご主人がユダヤ人。劇中「検挙」が行われた居住区に、ご家族が住まわれたこともあるそうだ。1995年の一件に触れたジャーナリストの彼女が本作に携わったことは、自然な成り行きだったのか。ジョーのモデルとなったジョセフ・ワイスマンご本人も出演もされている。


メジャー俳優はメラニーとレノ。メラニーのルーツもユダヤ。撮影中、体調崩すほどの根の詰めよう。こけた頬にユダヤの誇りをみた。ジョーのパパを演じたエルマレの本職はコメディ。重いテーマの本作オファーに躊躇。脚本に目を通し、やるべきだと決断。


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ラスト、ジョーのアップがいつまでもいつまでもいつまでも、笑顔にならない。少年が抱えた闇の深さ。きっと僕らが想像し得るどの闇も及ばない。


初見は劇場で今回再見。メラニーのシーンばかり覚えてた大バカ者で恥ずかしい限り。発覚したフランスの負の歴史。目を背けてはならない事実を映像化した勇気を讃える。過去を知るために。未来を作るために。



hiroでした。