HDD鑑賞


パンを割ったときのホワッとした感じpan1
しあわせのパン


監督・脚本:三島有紀子

撮影:瀬川龍

音楽:安川午朗

主題歌:矢野顕子with忌野清志郎

出演:原田知世/大泉洋/平岡祐太/森カンナ/八木優希/光石研/霧島れいか/渡辺美佐子/中村嘉葎雄/本多力/池谷のぶえ/中村靖日/あがた森魚/大橋のぞみ/余貴美子


北海道、洞爺湖畔のカフェ・マーニ。そこにはお客さんが泊まれるあったかいベッドと、水縞くん(大泉洋)が焼いた焼きたてパンと、りえさん(原田知世)が淹れるおいしいコーヒーがある。「やあやあ」の阿部さん(あがた森魚)、りえをほめる郵便屋さん(本多力)、近所の広川さん夫妻(池谷のぶえ中村靖日)、地獄耳の陽子さん(余貴美子)ら常連さんが集うカフェに、失恋したOL(森カンナ)、元気のない小学生(八木優希)とその父(光石研)、老夫婦(渡辺美佐子中村嘉葎雄)が訪れる。

pan2


この映画、LOVE(((o(*゚▽゚*)o)))


この静けさ。塵ひとつない清潔感。

セリフは最小限。

余計な説明も一切なし。

ともすれば雑。

なんでわかっちゃうの?

と、能力者並みの洞察力に舌を巻く。

これは絵本。

大人の小さなファンタジー。


pan3


音がよい。

静かなのは無音とは違う。風の音、木の実の落ちる音、鳥のさえずり…微かな音が、時に人の心情を映す。


そんな静けさのなかで、耳をすまそう。

コーヒーをたてる音。コトコト。目の覚める苦味と芳ばしい香りが漂う。

サクッ。ナイフが固いパンの表面に切れ目を入れる。湯気とともに甘い香りが立ち上る。

音がそこにない匂いを引き出す。


pan4


画の力が凄い。

マーニの周りの景色…水彩画のようだったり、寂しさを含んでいたり、雪が優しかったり、草花が力強かったり。北海道の力。そいつを丁寧に、根気よく映し出した撮影隊に頭が下がる。

パリッとしてシャキッとして、歯ごたえまでを感じさせる料理たち。これも画の力。美味しく見える色味も、背景も、お皿も、切り方も技。フードスタイリストは石森いずみ先生。真上カットが多いのは流行。hiroはタニタ式と呼んでいる。(笑)


pan5

本作は、観る人の立ち位置によって、いろんな彩を放つ。だから説明は余計。水縞夫妻にさえ、何やら過去がありそう。

何があったっていい。人に言えない過去なら、観客だって知らなくて当然。いろいろあるのは誰でも同じ。
いろいろあって、水縞夫婦はそこにいる。ひとつのパンをちぎって分け合う二人のカフェに、常連たちも集う。OLも親子も老夫婦もそこに来る。かく言う我々も、スクリーンや画面の前にいる。

マーニに居合わせた客になって、そこに起きた出来事に参加している。そんな気にさせてくれる素敵な映画。
聴覚と嗅覚と視覚でもって、焼きたてのカンパーニュを一緒にいただきましょう。



hiroでした。