35本目(6月22日鑑賞)


ダメ親父たちがダメでなくなるとき。
jm1

人生はマラソンだ!


監督:ディーデリック・コーパル

脚本:マルティン・ファン・ワールデンベルグ/ヘーラルト・ムールダイク

出演:ステファン・デ・ワレ/マルティン・ファン・ワールデンベルグ/マルセル・ヘンセマ/フランク・ラマース/ミムン・オアイーサ/アリアーネ・シュルタ/シンシア・アブマ/ジョルジナ・フェルバーン/マニュル・ブロクマン/マルティン・レイクメア


ロッテルダムで自動車修理工場を経営しているギーア(ステファン・デ・ワレ)は、レオ(マルティン・ファン・ワールデンベルグ)、ニコ(マルセル・ヘンセマン)、キース(フランク・ラマース)ら古くからの仲間とエジプト人労働者ユース(ミムン・オアイーサ)の4人の従業員と呑気な時間を過ごしている。ある日、がんを告知されるが、普通の生活に戻れなくなる抗がん剤治療を拒否する。

そんな矢先、仲間たちに税金の滞納がばれ、工場は暗い空気に包まれる。脚に障がいをもつユースが、マラソンランナー時代にスポンサーから広告収入を得ていたことを聞いた4人は、スポンサーをみつけ、近く開催されるロッテルダム・マラソンに参加することを決意する。


jm2

やる気なし~な4人組。


最近、足を運ぶようになった109シネマズ川崎。大手シネコンながら「これは」という作品をかけてくれる貴重なシアター。「チョコレートドーナツ 」もここで鑑賞。その時初めて予告を観たのがこれ。話題の一本らしい。そして、上映館も少ない。オランダ映画は未体験、初鑑賞。サッカーワールドカップはオランダ応援中。


どうしようもない連中がなんとなく始めたもの。それがいつしか人々を変え、感動を呼ぶ。…これは、矢口靖史商法ではないか。(笑)

jm3

工場のためにマラソン?


マラソンを走る、とはいえ、フルマラソンの距離すら知らない面々。動機からして広告料なのだから、不純極まりない。酒もたばこもやめる気配なし。エントリーした大会はすっぽかす。エジプト人コーチも打つ手なし。

そんなコメディ・タッチでキックオフ。しかし、50年近い人生を歩んできた彼ら、それぞれ抱えているものは深刻だったりする。

がん宣告を受けた主人公ギーアは、養子である息子との関係も思わしくない。

相棒レオは、元ポルノ女優の妻が育児放棄。挙句にドラッグに溺れ、他の男と逢瀬を重ねる。

キースは、幼い子を失って以来、教会通いを欠かさない妻の厳粛な態度に、ストレスをためている。

独り身のニコは、自分がゲイであることを誰にも言えないでいる。


jm4

そして運命のスタート!


オランダという国、サッカー観てる時とハイネケン飲んでる時とハウステンボスに行ってる時、くらいしか意識することがあまりない。そうそうスピードスケートも強かった。

オランダにおける差別意識(本作では外国人労働者やゲイに対する意識)、サッカーの国民的スポーツ度(本作でも数チームの名があがっている)、養子縁組の一般的認知度、医療の成熟度(本作ではがん告知や治療、終末医療の意識)…そういうものがチラホラみえて興味がわいた。これも映画のステキさのひとつ。

ダメダメな人々については、「問題を抱えてもおおらか」だとか「楽観」だとか「危機意識がない」だとか「解決に前向きでない」だとか…ヨーロッパ全体の民族性として言われることがある。本作鑑賞で、それがチラとよぎったけれど、みんながみんな、そんなんじゃないだろうし、ダメダメなのはhiroも同じかもねと、「楽観」している自分を発見したり。(笑)


「チョコレートドーナツ」同様、口コミや煽り文句に振り回されずに鑑賞できれば、いい作品。ただし、ラストは好き嫌い、別れるかな。


工場再建のために始めたマラソン。最初はそれでもいい加減。やる気はあるのかとイライラもする。

やがて問題をひとつひとつクリアし、クリアするごとに変わっていく彼ら。強くなっていくおっさん。ダメ親父がダメでなくなっていく。

一歩一歩前に進むこと。成長すること。何歳になっても、どこの国にいても、それは誰にでもできることなんだ。

hiroでした。

邦題は少し的外れ…でも、原題に近いのでしょうがないかな。



脚本8 映像6 音響6 配役7 他(ロケーション)7

34/50