27本目(5月27日鑑賞)


悲劇の元セレブの哀歌
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ブルージャスミン


監督・脚本:ウディ・アレン

出演:ケイト・ブランシェット/サリー・ホーキンス/アレック・ボールドウィン/ボビー・カナヴェイル/ルイス・C・K/アンドリュー・ダイス・クレイ/ピーター・サースガード/マイケル・スタールバーグ/タミー・ブランチャード/マックス・カセラ/アルデン・エーレンライク


金融取引で財を築いたハロルド(アレック・ボールドウィン)の妻として、ニューヨークでセレブな生活をエンジョイしていたジャスミン(本名ジャネット)(ケイト・ブランシェット)は、夫の逮捕・自殺によりすべてを失い、サンフランシスコのダウンタウンで暮らす妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の元に転がり込む。

夫オーギー(アンドリュー・ダイス・クレイ)と別れ、働きながら二人の子を育てるジンジャーとは、これまでの生活も元々の性格も真逆なジャスミン。庶民の生活に親しめず、過去を振り返っては独り言を言うようになる。

久しぶりに招かれたパーティーの席で知り合ったドワイト(ピーター・サースガード)と親しくなるが、今の生活を打ち明けられずに嘘を重ねていく。どうにかドワイトからのプロポーズにこぎつけるが、過去にハロルドによって大損させられた恨みをもつオーギーによって嘘がばらされる。


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堕ちてしまった現実を受け入れられないジャスミン。


それでも恋するバルセロナ 」で書いた通り、ウディ・アレン初心者です。

ヨーロッパ系作品が続いたウディ、本作で久しぶりの本国凱旋だという。なんか…観る順番、間違ってるような。

本作、「主人公が痛い」と聞いた。確かに痛い。ただ、深刻ではない。いや、心を病んでいるのだから、本人は至って深刻。ウディの目は「傍観」。主人公に肩入れしない。暖かくもあり、冷たくもあり。

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姉に反発しながらも違う人生の一端を垣間見る。


妹は姉の失意に困惑、姉の暴走に迷惑。ただし姉妹。血は繋がらずとも姉妹。姉の暴走にちょびっと乗っかり、ちょびっと楽しい夢を見る。

そんな妹のことも、巨匠は「傍観」。流されるオンナ、騙されるオンナを眺めてる。最後の彼女の決断、あのオトコではいささか不安。

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あの生活は泡のごとく消え。


夢のような生活は弾けてなくなり、ジャスミンはそれを受け入れられない。夢想しては想い出に浸る。夫の浮気と逮捕と自殺=悲劇のヒロイン。同情しようかと思ったら、観客もまた、ジャスミンにかきまわされていることに気付く。彼女が病んだ要因は、自分自身にあったとは。


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各賞ノミネートがうなずける好演。


ウディが仕組んだ、ソフトなフェイク。オチがわかると、悲劇のヒロインは滑稽にさえ見えてくる。悲劇と喜劇の紙一重のその最も薄い部分。一見重そうなテーマだけど、後味が悪くないのは、そのせいか。

それでも恋するバルセロナ」で、ドロドロしそうな四角関係をサラリと描いた「傍観者」ウディ。ここでも切羽詰ったボンビーセレブをサラリと傍観。感動を強いるのでもなく、勇気を与えるのでもなく、共感を求めるのでもなく…ただ、「西海岸に、こんな女の人がいたよ」とさりげなく。

上映劇場が少ないうえに、徐々に回数も減っている。なんとか滑り込みで観ることができた。

まだまだウディ初心者のhiro。とりあえず鑑賞できたこの2本、まずまずの好発進です。

初心者なので、勘違いがあっても許してね。



hiroでした。




脚本8 映像5 音響5 配役8 他(音楽)7
33/50