HDD鑑賞

 
春を守った「家族」。
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重力ピエロ
 
監督:森淳一
原作:伊坂幸太郎
脚本:相沢友子
音楽:渡辺善太郎
出演:加瀬亮/岡田将生/小日向文世/熊谷知博/北村匠海/吉高由里子/岡田義徳/渡部篤郎/鈴木京香
 
仙台郊外で連続放火事件が起きるなか、何者かによる落書きの清掃作業をしていた春(岡田将生)は、落書きと放火現場がリンクしていることに気付き、兄の泉水(加瀬亮)に相談する。最初は春の推理に興味を持たなかった泉水だったが、大学院で遺伝子の研究をしていた彼は、落書きに描かれた文章の頭文字と遺伝子構造の共通点を発見。次の放火が予測される落書き現場を二人で張り込むことにする。
「悪い奴を懲らしめる時は、バットとアニキがつきもの」という春に、二人の絆に思いを馳せる泉水。二人の消せない過去には、早逝した母梨江子(鈴木京香)と母を支え続けた父正志(小日向文世)の姿があった。

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どんな役でもビタッとはまる加瀬君。

原作既読。公開時に劇場鑑賞。今回二度目。そして、やっぱり切ない。

「伊坂作品と言えば中村監督」と思ってる。それもあって、本作初見時、それほど思い入れがあったわけではない。伊坂作品独特のシニカルな笑いはなく、ただ重い。伊坂の特徴である、他作品のキャラクターのクロスオーバーもない(原作にはある)。つまりは、伊坂らしさに欠ける、といったところ。原作では、「オーデュポンの祈り」から伊藤、「ラッシュライフ」から黒沢がゲスト出演。

二度目の鑑賞、物語を追うことに集中してみたら、だいぶ見方が変わった。

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岡田将生史上最高の演技だったのでは。
 
未見の方のために、多くを語れない。泉水の春への想い。春の泉水への信頼…弟らしい甘えといってもいい。カットインで入る子供時代の二人。子供の頃の二人がそのまま大人になる。
加瀬君・岡田君の演技が秀逸。何をやらせても見事にはまる加瀬君。岡田君は、これまでで最大の輝きを放つ。こんな二人の子供時代を演じた子役二人の熱演も光る。特に兄はそっくり!

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本作の小日向さん、カッコイイ!
 
語れないのがもどかしい。春が何に追い詰められ、何に突き動かされたのか。春の心中を察した泉水が決断したことは、春と同じ決断だった。何も語らずともわかりあえる二人は、紛れもない兄弟。そして、ある事件に巻き込まれた母、その母を支えた父。その絆の強さは「最高の家族」ではなく「最強の家族」である。小日向さんのヘア・スタイルは、わずかに与えられた「(笑)」だった。

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「俺たちは最強の家族だ」…名言誕生。
 
登場人物は少ない。
渡部篤郎は、その発する言葉のひとつひとつが悪魔である。
息抜きゲスト出演かと思われた吉高は、終盤に思わぬ活躍。彼女がいたから兄弟はつながった。

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謎(笑)のオンナ。実は謎を解くキーマン。

終わらせ方はあれでいいのか、と躊躇。伊坂作品なら「アリでしょ」となる。
伊坂作品の主人公たち、大なり小なり不幸である。不幸を背負って、さも普通に暮らしてる。どこかフワフワしながら、生きている。
不幸などそこいらに落ちている。それでも生きていくのが、人生なのだ。
 
二人になった兄弟。「最強の家族」に育てられた二人。チラリと謎のオンナが現れる。兄弟と謎のオンナ。この組み合わせが新たなる「最強の家族」になるのでは…などと考えてしまった。
 
 
 
hiroでした。
伊坂×岡田将生の新作は次回アップ!