阪急電車
有川浩
うわーっ! 映画のまんまやん!
…って最初に思った。小説ありきの映画なのに、有川さんに申し訳ない。
映画を先に観てしまったというのもあるかもしれない。しかし、以下はhiroの持論。原作物の映画の出来がいい場合、監督はじめスタッフ一同、原作小説が大好きな場合が多いんだと思う。サッと読んで、これいいね、レベルではない。大好きなんだと。
有川作品は実に多くの映画のネタとなっている。どれも悪い評判はあまり聞かない。映像化しやすいから? それもあるだろうけど、一番は誰にでも好かれやすいからなのではないか。映像作家が彼女の小説を大好きになれるから、素敵な映像作品になるのではないか。…などと自分の原作物映画論などをぶちまけてみたりする。
冒頭の数行が、とても印象的な「阪急電車」。引用させていただく。
「電車に一人で乗っている人は、大抵無表情でぼんやりしている。視線は外の景色か吊り広告、あるいは車内としても何とはなしに他人と目の合うのを避けて視線をさまよわせているものだ。」
そうそう、やるやる~(笑)
「そうでなければ車内の暇つぶしの定番の読書か音楽か携帯か。」
そうだよね。今では携帯はスマホに。しかも読書・音楽より圧倒的にスマホ率が高い。ここまで、身に覚えがあったり、主観として日常目にする風景だったり。
「だから、
一人で、
特に暇つぶしもせず、
表情豊かな人はとても目立つ。」
…電車内で読んでいるにもかかわらず、ププッと吹きだす。そんな奴いる?
…そこで思う。自分はどんな顔をしているのか。
…そして感じる。どこかに。有川さんの視線。
冒頭の1センテンスで、この小説が、誰もが知っている電車の「車内」が舞台であることがわかる。有川さんがかつてみたことのある風景、あるいはそれをニヤニヤしながら膨らませてみた風景が、展開するのであろうと予測させる。もしかしたら、自分か知っている誰かが、登場人物のモデルになっているかも…そう思うとドキドキしてしまう。
こうした語り手のキョロキョロした観察に始まるこの小説。
征志と図書館でよくみかける女性。
花嫁ばりの白いドレスで乗車する翔子。
預かった孫娘と出かける時江。
人目もはばからず大声でカレシに怒鳴られるミサ。
アホなカレシの話題に華を咲かせる女子高生・えっちゃん。
地方から出てきたパンクロックスタイルの圭一。
ランチに向かうおばちゃん集団に一人馴染めないでいる康江。
片道15分、往復30分で宝塚駅~西宮北口駅を結ぶ阪急今津線に乗り降りする、さまざまな登場人物。何の関係もない彼らが、時に傍観し、時にすれ違い、時に会話し。袖振りあうも何かの縁、的な話。
どこからどんな縁が転がり込んでくるのかは、誰にもわからない。
大なり小なり、人はなにかしらの影響を与えあっている。
一人で生きてるんじゃないから。
hiroでした。