63本目(11月30日鑑賞)
「重いかな」という心配はご無用。エンターテイメント作品ですよ。
キャプテン・フィリップス
監督:ポール・グリーングラス
脚色:ビリー・レイ
撮影:バリー・アクロイド
美術:ポール・カービー
編集:クリストファー・ラウズ
衣裳:マーク・ブリッジス
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:トム・ハンクス/キャサリン・キーナー/バーカッド・アブディ/バーカッド・アブディラマン/ファイサル・アメッド/マハト・M・アリ/マイケル・チャーナス/コーリイ・ジョンソン/マックス・マーティーニ/クリス・マルケイ
2009年4月、アラビア海を航行していたコンテナ船マースク・アラバマ号は、ソマリア沖で武装した海賊(バーカッド・アブディ、バーカッド・アブディラマン、ファイサル・アメッド、マハト・M・アリ)に襲撃される。リチャード・フィリップス船長(トム・ハンクス)は、機転を利かせた作戦で一度は海賊を振り切るが、2度目の襲撃で乗船を許してしまう。フィリップスはじめ乗組員のあらゆる抵抗で、金庫の現金と救命艇を与えて難を逃れるところまで交渉できたが、一瞬の隙を突きフィリップスが海賊の人質にとられてしまう。
記憶に新しい実際に起きた事件を映画化。ポール・グリーングラス監督は「ジェイソン・ボーン」シリーズで人気。マット・デイモンを起用して撮った「グリーン・ゾーン」では、アルカイダ攻略の引き金となった大量破壊兵器の存在の有無を問う、社会派作品にチャレンジ。今作では、救出されたフィリップス船長の著書をベースにストーリーを構築。「グリーン・ゾーン」では告発モノの重い素材に、エンタテイメントのソースをかけて柔らかく仕上げていた。今作でもその手腕、活かせていた。「アカデミー賞最有力」のテロップが邪魔。感動の実話を、テンポのいい救出劇というエンタテイメントとして、観る者をドキドキさせてくれた。
普通の人の普通の演技に絶賛の嵐。
この作品、嫌だという人。きっと、海軍が介入してからの展開では。いかにもアメリカらしい、力任せのゴリ押し。たった4人の海賊相手。駆逐艦に始まって、SEALまで投入。まるで秀吉。
ただし、アメリカ万歳ではない。ソマリアのことも描いてる。ちゃんとかどうかは分かんないけど、とにかく描いている。海賊4人組のキャラが立つ。背景もある。あれがないと、確かに「万歳」。そうはなっていないので、よかった。…んじゃないだろうか。なので、hiroは大変満足。
エンターテイメントに寄りすぎ?…それはあるかも。「グリーン・ゾーン」と同じ匂い。でも、寄らないと、「ゼロ・ダーク・サーティ 」になっちゃう。それじゃ、嫌なんだよな~。
海賊たちの名演あってこそ!
際立ったのが演出の妙。パンフやウィキ、鑑賞後に読むとネタがゴロゴロ。
バーカッド・アブディはじめ 4人の海賊団。麦わら帽子はかぶってないし、剣士もいない。それでも彼らのキャラが凄い。ホンモノのソマリア移民を集めてのオーディション。それを勝ち抜いた4人のシンデレラ・ボーイズ。映画経験はゼロ。信じられない。ムセの表情、間、一挙手一投足…プロの技。ハッパやってぶっ飛んでるやつ、ずっと船の操縦やらされてるやつ、若くてかわいげのあるやつ。実に個性的な面々。骸骨海賊団は、この4人でしかありえない。
コンテナ船の乗組員が、その海賊と出会う。ボートから飛び移ってきたやつらはどんなやつらなのか。撮影のその瞬間が初体面だったらしい。お互いに睨み合う。「こいつか~」。これ、リアルだったらしい。
最後を飾る海軍の衛生兵。彼女も実は女優じゃない。ホンモノの海軍所属の衛生士官。監督の思い付き。練習のつもりでやってみて、と。で、数テイク撮影。「ええやん、これ」と言ったかどうか。とにかくそれがラストシーンに採用。
その他、大御所トム・ハンクスにもアドリブの強要多々。だったらしい。
ちなみに、あちこちでみられる映画紹介記事のあらすじに、「乗組員の自由と引き換えに人質となる」みたいなことが書いてある。映画を観た限り、ちょっと違う気がした。まあ、いいや。
ちなみに、音楽がなかなかいかしている。音楽担当のヘンリー・ジャックマンは、あの神・ハンス・ジマーの弟子らしい。
ソマリアのかなしい事情。でも「許される行為ではない」と監督。ムサを除く3人の末路。たった数秒。あのあっけなさには、監督個人の怒りを感じた。
hiroでした。