DVD鑑賞


阿部ちゃんの鬼気迫る怪演
観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-tuya1

つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語


監督・脚本:行定勲

脚本:伊藤ちひろ

撮影:福本淳

編集:今井剛

原作:井上荒野

音楽:coba

出演:阿部寛/小泉今日子/野波麻帆/風吹ジュン/真木よう子/忽那汐里/大竹しのぶ/羽場裕一/荻野目慶子/岸谷五朗/渡辺いっけい/永山絢斗/田畑智子/渋川清彦/高橋ひとみ/奥田瑛二


伊豆大島。病院の一室。呼吸器によって生かされている女・艶。精気の抜けた顔で佇む夫・春二(阿部寛)。紙袋から取り出す包丁。愛していながら、殺したいほど憎い。
春二は奔放だった艶の過去をたどる。過去に関わった男達に連絡を取る。艶が危篤だと。幼い艶を犯した従兄弟。元夫。島の若者。彼らを取り巻く女性たちにも、艶の存在が影を落とす。

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体重を落としてまでの熱演。
主演男優賞のテルマエより格段上の演技。


どうしよう。これ、エロ映画か? この手のレビューは書いたことがないので、困ったぞぉ。
荻野目慶子がスケベ。眼帯もなぜかエロい。綾波以上に。その眼帯、ちゃんと笑えるオチがあった。オチの後に壮絶バトル。小泉今日子が志麻さんに見える。荻野目は梨乃さんか。
野波麻帆の話は削除可。本編との縁は薄い。が、エロ。これは日活ロマンポルノか。岸谷がまた、それっぽい。サービスなのか? サービスでしたか。ありがとう。

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キョンキョンvs荻野目のバトル。
まるで東映のあの映画のよう。


この勢いでエロ一直線かと思いきや、ベテラン・風吹ジュンの登場で空気が変わる。舞台が島になる。島に渡り、知らなかった夫の過去を突きつけられる被害者。可哀想ではないか。春二はひどい奴なのだ。
さらに島の若者の登場。真木よう子はいい。永山絢斗に嫉妬すら覚える。島の風景で一気に艶が近くなる。顔が見えない艶の像が、次第にピントがあってくる。

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真木さんは「SP」のときからぞっこんなんス


忽那汐里が割り込んできて、また遠ざかるのか~? さらに奥田瑛二の登場で、エロに引き戻される予感を掻き立てる。案の定奥田の毒牙に堕ちる忽那。しかし、彼女の母・大竹しのぶが絡んできて、実は…という展開。ラストに向かって突き進む…いや、相変わらずのんびりと進む。

豪華キャストとはいえ、一堂に会することはない。主演であるはずの阿部ちゃんの登場カットも多くはないし、阿部ちゃんと「共演」している役者さんの方が少ないという。

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忽那も濡れ場? いやいや、まだそこまでは。


関係があるようで、ないような話が、オムニバスのように入り込んでくる。行ったり来たり。ペースはかき乱される。

艶という女。病室で横たわる姿。たまに回想だったり、写真だったりで登場するが、顔は最後まで明かされない。奔放で淫乱で、さぞ美しいという噂。想像を掻き立てさせながら「見せない」手法は面白い。観る人それぞれの「艶」がそこに現れる。

が、ひとつひとつのエピソードに共感できなくて。それぞれの「愛の形」がテーマなんだろうけど、共感できるかどうかが、この作品に入れるかどうか、の分かれ目。そこそこの評価は得ているようだけど、行定監督、すいません、hiroは入れませんでした。


阿部ちゃんの演技は、登場が少ないのにすごいインパクト。胸筋ドカ盛りの主演男優賞獲得作品「テルマエ・ロマエ 」とは真逆。ガリガリに痩せ細って、頬までこけて、目だけがギラギラと暗い光を湛えてる。こちらで賞獲りの方が納得できたんだろうな。


世界の中心で愛をさけぶ」の行定監督。「今度は愛妻家 」では素敵な魔法の言葉で泣かせてもらいました。ここではどんな魔法が用意されているのか…待てど暮らせど、その気配もない。最後まで来てやっとわかった。これは春二が艶にかけられた魔法。最後に魔法が解かれるんだと。そのキーパーソンに、物語には無関係に見えたあの女優が、終幕の後、そうなっていくのだろうなと予感させて終わる。その女優、hiroの推し女優の一人だったりするので、そこは楽しませていただいた。



hiroでした。