過去レビュー。


ツレがうつになりまして。



観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-ツレ3



仕事でうつの原稿を書いてます。年4回、各1ページ。その原稿の監修をお願いしている先生の著書のマンガ・イラストを、この作品の原作者である細川貂々さんが書いている。縁としては薄い*笑


会社の顧客担当…いわゆる苦情係で働く夫・ツレが、ある日突然「うつ」になる。ストレスの原因が仕事であると考え、退職を促す妻・春子。漫画家としての収入は不安定であるにもかかわらず、貯金を取り崩しながらの闘病生活が始まる。


闘病といっても「うつ」ですから。病魔に蝕まれ、徐々に痩せ細っていき、最後の時を迎える…ような悲壮感はありません。うつには波があり、調子がいい時はふつうに生活できます。ところが波が下がっていくと症状が出始めます。起きれない。食欲がない。ふつうにできていたことができなくなり、することが億劫になっていく。全体的な気力の低下ですね。

映画の中のツレもそう。普段は買い物も行けるし、ペットの世話もする。が、調子が悪いと布団から這い出ることすらしなくなる。怠けているだけ…傍から見たらそう見える。でも、本当にできなくなるんです。



観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-ツレ2
通勤ができないツレ


このツレを演じたのは堺雅人。うつの患者役。見本になる役者やキャラクターがあまりにも少なく、難役だったと思います。逆に言うと、ここで演じ切れば、うつ患者の芝居なら手本にしろと、堺雅人が、この作品が、引き合いに出されることになる。そしてみごとに演じ切る。芸達者。ただ、大河ドラマで演じた徳川家定とややかぶる。


妻・春子を演じたのが宮崎あおい。こちらは篤姫(笑)。夫の治療のことを最優先に考えて会社を辞めさせる。仕事をくれる出版社に出向き「ツレがうつになりまして。仕事をください」と頭を下げる。電車に乗れない恐怖心を克服するために、一緒に電車で出かける。思い切りがいい。けなげ。かわいい。こんな嫁さん、いいですよね!

ちなみに、この作品におけるあおいちゃんの役名が春子。この作品の少し前に公開された「神様のカルテ」で演じた桜井翔の妻の役名がハル。どうでもいいことだけど。

ちなみに、hiroはあおいちゃんのファンです。彼女のおでこと眉間の縦じわが魅力。「少年メリケンサック」と肩を並べる今作のキャラクターを観ただけで評価は20%増。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-ツレ1
堺さん、代わってください。


この映画、闘病モノとしてはゆるい。間違いなく闘病モノであるにもかかわらず、ゆるい。「実際にうつで苦しんでいる人に失礼」っていう考えもありますよね。そうしてうつを特別扱いして、うつ病患者を取り囲む壁を高く厚くすることが、果たしていいんでしょうか? 腫れ物に触れるような扱いでいいんでしょうか? 結果、うつの知識を持たないまま重症化する。周囲の人もそう。頑張れ、気力だ、とうつ患者をそうとは知らないまま追い込む。まずはうつを知らないといけない、って思うんですけど。その辺がこの原作なり、映画なり意図なんだと思うんですけど。

(調べものをしていて、メンタルヘルスの関係者のほとんどは、このようなスタンスなんだと感じています。)


実はうつの種は誰もがもっています。僕もね。それがいつ芽を出すのかなんて誰にもわからない。ほんの些細な、取るに足らない言葉で発症することだってある。

急に芽を出したうつに対し、「自分は異常者だ」と自己否定してはいけません。うつなんてよくあることだと肯定し、そうなったときの心の準備だけはしておく必要があるのではないでしょうか。



だからですよ。自分はうつだという人、そういう人が身の周りにいる人、自分もそうかもしれないという人…うつ病は異常ではありません。セロトニンという脳内伝達物質の異常による病気です。時間はかかるけど、必ず治ります。



hiroでした。

主人公はあっさり会社を辞めましたが、今は自重させることが多いようです。回復しても職場がない。まずは会社に相談して、対応を考えてもらう。そのうえでゆっくり治して、ゆっくり職場復帰する。会社の理解が得られればそれがベストなんだと思いますよ。


これはレビューか?