モリオカから、こちらに引っ越しをするとき、

弥太郎は、いつも上がらない車の上にあがって、しかも荷物の上に座ってじっとしていた。

まるで、「連れてって。いっしょに行くから。」と、言ってるようだった。

その時は泣く泣く離れたのだけれど、それから数か月後には、弥太郎は私のところに来ることになった。

 

モリオカには、動物病院が何件もあったし、かかりつけの病院の先生、スタッフさんとも、みなさん良くしてくださった。

私が離れてから、弥太郎を診てもらったさいに、先生は、

「おかあさんのそばに居させてください。離れたらこの子は弱ってしまいますよ。」

「2時間ちょっとなら、通院できます。」

先生、それ無理です。

こちらに来て、私は隣の市の病院に行っていますが、一度も血液検査もしようとも言われないし、「年齢がね。」と先に言われるような先生は、わたし、この子を見てもらう気持ちにならなくなりました。

 

弥太郎は、もう長くありません。

 

この子の我慢強さに私は、甘えているだけのダメな情けない飼い主です。

 

夜中によろよろと私のそばに来てくれた弥太郎が、私を舐めてくれましたが、それもいつもと違うメッセージのように感じて、

あの子に何度も謝りました。

 

もう少ししたら、この子はまた一人で私の帰りを待って、そして、苦しいのや、辛いのを我慢して時間を送るのでしょう。

薬を飲むときだけは、抵抗していやがる彼が、まだ力が残っている気がして、そんなときも愛おしいです。

 

彼といる時間、私だけが癒されているそんな罪悪感もあります。

わたしに何も言えないでいるのに、いつもの変わらない弥太郎の眼。

 

猫はすごい。

猫は強いって、そう思った。

 

弥太郎。帰るまで、待っていて。

 

その時を私も待っているから。