日本フィルハーモニー交響楽団・オンラインコンサート♬
前橋汀子さんのヴァイオリン協奏曲を本当に久しぶりに聴いていた。
初めて前橋さんの演奏を聴いたのは7歳の娘と文化会館で。私の孫が6年生であるように、前橋さんも私以上の年齢である。あの女優さんのような美貌とは違うけど、彫の深い眼差し。華奢な身体に似合わない力強い音色と伸びやかさは変わらない。
でも、正直私は第二楽章が終わる頃、自分が緊張感でいっぱいで音楽を楽しんではいられなかった。縦横無尽に弦を抑えながら動く指は疲れないのか?急にガクッと止まったりしないだろうか?ピアノは押せばとりあえず音は出る。でもヴァイオリンはただ弾いても美しい音は鳴らない。失礼だが年齢によるエネルギーの差がないわけがない。彼女が楽章の合間にドレスのポケットからハンカチを出してそっと汗をぬぐうと、私もため息をついて水を飲んだ。
弾き終えると、大きな拍手の中で、彼女はやっとあの可愛らしい若い時と同じ笑顔を見せて井上道義さんと握手をし袖に退いた。再び舞台に出ると井上さんのピアノでベートーベンの「ロマンス」をオケをバックに弾きだした。アンコールとは思えないしっかりとした1曲。とても軽やかで優しく、さっきまでの緊張感はまったく感じられない。
演奏を終えるとオーケストラの一人一人にヴァイオリンを高くかかげて拍手をしていた。5分の⒈ほどの観客には何度も四方に丁寧に挨拶をして、最後にオケの伴奏で「チゴイネルワイゼン」を弾いた。これぞ「前橋汀子!」とうなずいてしまう美しく迫力のある演奏。
マイクを持った彼女は「コロナでコンサートはすべて中止。毎日家にいました。もう弾きたくて、弾きたくて・・・コロナ禍で初めてのコンサートです。ありがとう、井上さん!オケの皆さん!お越しいただいた皆さま!」
泣き笑いのような満面の笑みで喜びを表していた。
拍手の中を井上さんと一緒に下がり、オケのメンバーも楽器を持って席を離れ始めお客様も席を立つ。そこへ両手を上げながら再び前橋さんが舞台に戻ってきた。手を振りながら何度も何度もおじぎをなさる。
胸が熱くなった。彼女の「弾きたくて、弾きたくて」は「生きたくて・・・」
と聞こえる。私は何も表現できる手段を持たないけど、彼女の溢れ出る感動は痛いほどわかった。
彼女には演奏することが生きる証なのだろう。そして今夜、ヴァイオリニストとして昨日までの弾けない葛藤から解放されてベートーベンやサラサーテを弾き切ったのだと思う。
私はサントリーホールにいたのではない。ダイニングテーブルにパソコンを置いて近所に聞こえるような拍手をしていた。6月の反田さんから始まり、辻井さん、宮田さん、ツケメン、、、クラシック・ジャズ・タンゴ・ミュージカル、、、
ホールでの臨場感はないが、同じ時間に同じ音を共有し感動するこの試みは、経緯は悲しいが新しい音楽や舞台との出会いかもしれない。
夜遅くに車を運転する事もなく、駐車場や駐車料金を気にせずに、車椅子や杖の置き場、トイレの確認・・・それらの心配はまったくない。
小さな小さな机上の舞台、イマイチの音質。
でも、私は夕刻が楽しみで朝から元気でいられるし、何より1回のS席の料金で何回コンサートを楽しめるだろう。次回は18日の19時。
私一人の最前列の特等席で♬ブラボー!皆さんもいかがですか?


