「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

2024年10月に読んだ本は11冊でした。うーん、不調。
 

自分で1区から3区までと5区も宮ノ下まで走っちゃうくらいの、筋金入りの箱根駅伝ファンなので、このタイトルを観たら読まずにいられない。
 

◆俺たちの箱根駅伝 上(池井戸 潤)
学連選抜を題材にした小説って、堂場瞬一の「チーム」があるけど、 なんといっても実際の08年の学連選抜4位でしょう。率いたのは青学の原監督、甲斐さんのモデルもやはり原監督っぽいですね。青学は翌年予選を突破、その翌年にはシード権まで獲得しました。小説の方は、選手のみならずTV局の熱い戦いまで描かれていて大満足、下巻が楽しみです。

夏の文庫本フェアから8冊

◆キッチン常夜灯 (長月 天音・角川文庫)
生まれが文京区、水道橋は最寄り駅だったので、あの坂を上ったあたりの裏通りかな?おもてなし、hospitarityとは何か、やらされるのではなく、何ができるか、美味しそうな料理を通じて考えさせられる一冊でした。このレストラン、お値段はどれくらいなのか、ちょっと気になります。

◆ゴールデンタイムの消費期限 (長月 天音・角川文庫)
斜線堂有紀さんというと「楽園とは名探偵の不在なり」からか、ミステリーの人という印象が強かったのですが、こういう青春小説みたいなのも書かれるんですね。かなり変化球ですけど。マスコミにあまた登場する天才少年・少女って、その大半は記憶の彼方に去って行く末まで気にしたことないけど、本人、葛藤があるのでしょうね。天才少年じゃなくてよかった。AIによる天才の生成、それを受け入れるか同課の葛藤、自分の気持ちに折り合いをつける人。天才と呼ばれることに対する執着を棄てて自分の人生を歩む人、成長物語にエール!ですかね。

◆盲目的な恋と友情 (辻村 深月・新潮文庫)
ちょっと辻村さんらしくない作品、とは思ったが、でも、面白かった。ダメ男とヤンデレ女、といってしまったら辻村さんに失礼だろうか。でも、とくに後半パートの、留利絵の壊れっぷりというか、思考回路の描写が、そうきたかと、ページを繰る手が止まりませんた。

◆極楽に至る忌門 (芦花公園・角川ホラー文庫)
著者の作品は「異端の祝祭」に続き2作目。四国の山間の小さな村に残る悪しき土地神に纏わるオカルトホラーの連作短編。終盤にようやく物部斉清さん、イケメンの拝み屋登場、この人、他の作品にも登場する人?

◆宇宙のあいさつ (星 新一・新潮文庫)
「新潮文庫の100冊2024」より。毎年1冊は必ず選本される星新一さんのショート・ショート。今年のは一本がいつものよりも若干長め?読みやすかったです。

◆ネコシェフと海辺のお店 (標野 凪・角川文庫)
初読の著者、カドブンの選本って、なんかごちそう関係の本、多いんですよね。5編の連作短編、行き詰ったときに現れるサバトラのネコシェフの海辺のレストラン、気軽に読めました。

◆にじいろガーデン (小川 糸・集英社文庫)
子持ちの人妻と高校生が一目ぼれでレズの恋に落ち、雪国の寒村に駆け落ちする、感動的ではありましたが、なんか現実離れした、リアリティの感じられないお話でした。

◆アウトサイダー (H・P・ラヴクラフト・新潮文庫)
新潮文庫の100冊のラヴクラフト訳文のも今年で3年目。訳文のせいなのかな。読みづらくて、何度も寝落ちしました。

◆この部屋から東京タワーは永遠に見えない (麻布競馬場)
著者の「令和元年の人生ゲーム」が直木賞の候補になっていて、「麻布競馬場って誰よ?」って思いながら読んでみたら意外と面白かったので、他の作品も読んでみた。

何者かになれなかった今どきの若者たちの短編集、でも人生なんてほとんど自分の思いどおりにならないものだし、すんでしまったことは取り返しもつかない。虚飾を棄て、現状を肯定し、前に進んでいくしかない。頑張れ、若者たち。

◆逆説の日本史: 大正混迷編 南北朝正閏論とシーメンス事件の謎 (28)(井沢 元彦)
このシリーズもいよいよクライマックス、日露戦争から大東亜戦争の40年間にさしかかった。マスコミの先導で国際協調より強硬路線に傾いていく世論、忍び寄る戦争の影、でも説明が丁寧すぎて遅々として時代が進まない。それに相変わらずの宗教と怨霊、私は第1巻から読んでいるので耳タコ、早く時代を進めてほしい。蛇足だが、何でも怨霊鎮魂に結びつけてしまう筆者、少なくとも源氏物語だけは鎮魂は関係なく、大河ドラマの一条天皇へのあてがき説の方が正しいと思います。