3月はミステリー月間にしようと思い立ち、とにかく海外ものも含め積極的に読んでみました。
まずは江戸川乱歩さん、昨年末の「このミス」の特集を参考に、再読を含め、有名どころを概ね網羅しました。
◆江戸川乱歩傑作集 (1) 孤島の鬼
「このミス」の特集でミステリ作家さんが選んだ第一位がこの作品、初読みでしたが、猟奇的なおどろおどろしさといい、密室殺人のトリックといい、想像の斜め上をいってました。一位に納得。
◆陰獣 (江戸川乱歩文庫)
「陰獣」と「踊る一寸法師」は再読、「盗難」と「覆面の舞踏者」は初読み(多分)。「陰獣」、やはり面白いですよね。個人的に、「孤島の鬼」と並ぶ江戸川乱歩の最高傑作と言ってよいと思います。一体何が真実なのか、静子、おそるべしです。
◆芋虫 江戸川乱歩ベストセレクション(2) (角川ホラー文庫)
10年以上ぶりの再読。表題作の芋虫は伏字が多いので、なぜか伏字のない新潮文庫版を引っ張り出してきて読んだ。表題作の他、「赤い部屋」「双生児」も良い。
◆パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション (6) (角川ホラー文庫)
パノラマ島綺譚は初読み、延々続く島の景観の描写がややくど過ぎだけど、まあ面白かった。石榴は再読。
◆小説紹介クリエイターけんご 江戸川乱歩 傑作選
乱歩さんの作品集は様々な出版社から出ているでどれを読めばいいか迷うところ。けんごさん選本のこの本は、「人間椅子」「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」「二銭銅貨」「押絵と旅する男」といった有名どころを含め、バラエティに富んだ11作品、それぞれにけんごさんの寸評がついていて読みやすかった。
◆江戸川乱歩推理文庫 31 少年探偵団・怪人二十面相
10年くらい前に古本屋で購入、そのまま積読本になっていた。発刊はなんと昭和!
江戸川乱歩と言うと、芋虫とか孤島の鬼とか、おどろおどろしい作品のイメージがあるのですが、こういう子供向けの探偵小説の草分け的存在でもあったのですね。
◆点と線 (松本清張)
古典的な名作ですが、なんと初読み。最初っから刑事の勘で犯人を決めつけ、後はただひたすらアリバイ崩し。犯人は。逆に、小細工しすぎない方がバレなかったってことか。トリックとかそっちの方の言及は何もないし、かなり古さも感じるし、それでいて面白くて一気読みしてしまったのは、名作たる所以か。
◆粘膜蜥蜴 (角川ホラー文庫・飴村 行)
これも10年来の積読本。
雪麻呂おぼっちゃまのすがすがしいまでの自己中心のぶっ壊れぶりが、おどろおどろしい描写も含めてやばい。そして雪麻呂にあくまで忠実な富蔵の真実!思ったほど重たくなく、楽しく読ませていただきました。
◆熟柿(佐藤 正午)
これをミステリーに入れるかどうかはともかく、佐藤正午さんにしては普通の小説でした。
轢き逃げで実刑判決を受け、夫に見捨てられ、息子とも引き裂かれたかおりの薄幸の半生。友達の鶴子もだが、なんといっても元夫のてっちゃんが最低、貯金を奪った斎藤もひどいし、雇主のパチンコ屋の対応も変。でも見捨てる人あれば手を差し伸べてくれる人もあり、やや希望が見えたかたちでお話は終り、よかった。
◆スカーフェイク 暗黒街の殺人(霞 流一)
昨年末の本格ミステリ第6位、ミステリー好きだけど本格はちょっと苦手なので、どうかなーと思いながら手に取ったけど案の定でした。
鮫肌の哲という凄腕の極道が殺され、名うての極道4人が自分が犯人と名乗りを上げる。謎を解くのは隻眼の暗黒街専門の探偵という設定。現実味などそっちのけ、終盤は怒涛の展開で、真犯人を予想する暇もなく読み終えました。
◆消失グラデーション (長沢 樹)
これも長い間積読本にしていた本。序盤から中盤にかけては興味深く読めたが、結末というか、オチとトリックについては現実離れしていて、やっぱりこれも自分のなじめないタイプの本格だったかとややがっかり。
海外の古典的名作も3作読んでみました。
◆時の娘 (ジョセフィン テイ)
昔、高木彬光さんの「邪馬台国の秘密」というミステリーを読んだが、それと同様の歴史ミステリー。邪馬台国を始め日本史は興味もある程度の知識もあるが、英国史などほとんど全く無知だったため、読み進めるのにかなり苦労した。
一夫多妻の男系男子相続を原則とする日本と違って、欧州の王位継承は男女平等なだけに、結婚が王位継承に大きく影響し悲惨な政争となりやすい。こうしてみると日本の天皇制ってよくできていたんだなと思ってしまう。
◆三つの棺〔新訳版〕 (ジョン・ディクスン・カー)
ジョン・ディクスン・カーの代表作。何者かに射殺された高名な教授の隠された正体、偶然が演出した複雑怪奇な密室トリックは完全に理解でていないのだが、いずれにしても名作ミステリーには違いない。ただ、フェル博士のあまりに思わせぶりな態度、本筋とは関係のないメタ視点の密室談義、訳のせいもあるのだろうか、読みにくく感じた。
◆Yの悲劇【新訳版】(エラリー・クイーン)
日本でエラリー・クィーンの代表作と言えばこの作品を挙げる人が多いのではないでしょうか。初読みでしたが、意外な犯人とその動機、探偵役のドルリー・レーンが何もせずに事件は続いてしまう、ありえない設定と人間臭い結末、なるほど日本人好みのお話なのかなと思いました。
◆PRIZE―プライズ―(村山 由佳)
うーん、これはまた何とも激しい天羽カインさん。本を売って小説家として名をあげるためには天上天下唯我独尊、自分だったら絶対に係わりあいになりたくないタイプ。実際に、文庫本とかで途中で版元が変わったりする作家さんっているけど、あれはこういうことなのかな。ラストに向かっての千紘ののめり込み方も、それに対する天羽カインの対応も、怖い、怖い。これは本屋大賞、上位行くかも。
◆歴史学はこう考える (ちくま新書 松沢 裕作)
「逆説の日本史」の井沢元彦さんが、あまりに日本の歴史学者を批判するので、歴史学者側の言い分も読んでみようかなと思い手に取った。史料重視で宗教や怨霊、言霊等書かれていないことを考慮しない、専門が分化されていて比較や全体像がない等が批判の骨子だが、なるほど井沢さんの言う通り、歴史学=当時の史料をどう読むかであった。それでは歴史を学ぶ上で歴史学は欠陥があるのかというとそうでもなくて、要はミクロとマクロ、歴史研究に対する考え方の違いかなと。