イスラーム 26 アラビア科学 数学 2


アラビア科学 数学 2 代数学


・おもに「非ヨーロッパ起源の数学」(ジョージ・G・ジョーゼフ、講談社)、「アラビア科学の話」(矢島祐利、岩波新書)、「イスラームの歴史1」(ジョン・エスポジト、共同通信社)によります


アル・フワーリズミー(ムハムマド・イブン・ムーサー・アル・フワーリズミー)


 780年頃に生まれ、850年頃に亡くなった
 フワーリズミーは彼か彼の家系がフワーリズム(現在ではウズベクとトルクメンに属するホラズム地方)の出身であることを示している
 メルヴで占星術師?として有名になっていたアル・フワーリズミーは820年頃にアッバース朝第7代カリフ アル・マームーンに招かれてバグダッドに移り住み、「知恵の館」で最初は天文学者となり、後には図書館長にも任じられた


●「キターブ・アル・ムフタサル・フィ・ヒサーブ・アル・ジャブル・ワ・ル・ムカーバラ」(ジャブルとムカーバラの計算の抜書き)

・アラビアでの代数学の出発点となった書で、「アル・ジャブル」のラテン語訳にalgebra(アルゲブラ)という言葉が使われ、英語のアルジェブラ(代数学)になった


・アル・フワーリズミーはこの書で、あらゆるタイプの1次方程式と2次方程式を解く理論を提示しようとした

・「ジャブル」とは、今でいう「移項」である
「ムカバラ」とは、同類項を消去することを指す


・アラビア語で「根」にあたるjadhr(ジャズル)またはjidhr(ジズル)は、アル・フワーリズミーによって方程式の未知数を示すために用いられた


・アル・フワーリズミーはまた、2次方程式の幾何学的な解法を与えている


 もう1つのアル・フワーリズミーの書として
○「アルゴリトミ・デ・ヌーメロ・インドルム」(インド数字による計算法)
・10進記数法による算術計算を紹介したもの


・現在アルゴリズムは計算一般や解を求めるための一定の手順を表わす語として使われている




○サービト・イブン・クッラ(836頃-901)


 エウクレイデスの「原論」、アルキメデスの著作、アポロニオスの「円錐曲線」の一部、プトレマイオスの「アルマゲスト」などをアラビア語に訳した
 「代数問題についての正しい幾何学解」の中で、2次方程式の幾何学的な証明を与えた


オマール・ハイヤーム(1048-1131)


 2次方程式を解く一般的方法を与えた


 3次方程式の幾何学的解法を与えた
 実根をもつ3次方程式を2つの円錐曲線の交点をもちいて解いた


 補助曲線と幾何学的図形をつかって3次方程式を解くハイヤームの方法は、フランスの哲学者ルネ・デカルト(1596-1650)のものではない


○シャラフッディーン・トゥースィー(1135以前-1213頃)


 史上初めて代数式の最大値という概念を考え出した


 この概念は、誤ってフランスの数学者フランソワ・ヴィエト(1540-1603)のものとされる


 トゥースィーは「微分係数」という言葉に相当するアラビア語は使わなかったが、微分係数がゼロに等しくなる変数xの値を計算することによって、3次関数が最大値をとるような値を求めた