◎千一夜物語 その3
★千一夜物語 その3 さまざまな翻訳(超訳?)本
●レイン版(1838~40年)
・イギリス人のエドワード・ウィリアム・レインが英語訳したもの
・ブーラーク版を底本とする
カルカッタ第1版、ブレスラウ版を参考にした箇所もある
・アラブ世界の風俗習慣を解説するための詳細な注釈がついていた
●ペイン版(1882~84年)
・カルカッタ第2版を底本とするイギリス人ジョン・ペインによる英語訳
●バートン版(1885~88年)
・イギリス人サー・リチャード・フランシス・バートンによる英語訳
・カルカッタ第2版を底本とするが、ペイン版をかなり参考にしている
・性愛描写に関してかなり脚色している
・ちくま文庫の「千夜一夜物語」はバートン版の日本語訳である
●マルドリュス版(1899~1904年)
・フランス人ジョゼフ・シャルル・ヴィクトル・マルドリュスによるフランス語訳
・ブーラーク版を底本とすると主張するが、マルドリュスがどの写本によったかはわからない
・バートン版と同様に性愛描写を追加している
・マルドリュス版は本来の「千一夜」とははずれた、新しいアラビアンナイトである
○バートン版もマルドリュス版も「完訳」をうたっているが、「完訳アラビアンナイト」なるものは存在しない
・岩波文庫の「完訳 千一夜物語」はマルドリュス版の日本語訳である
「アラビアの原典の面影を最も完全に伝え」ているとは言えない
●平凡社 東洋文庫の「アラビアン・ナイト」(1966~92年)
・カルカッタ第2版のアラビア語からの日本語訳である
・アラビア語原典が確認されていない「アラジン」と「アリババ」は「アラビアン・ナイト別巻」に収録されている
・東洋文庫版の「アラビアン・ナイト」にしても、究極の寄せ集め本のカルカッタ第2版にもとづいている以上、ヨーロッパ経由のアラビアン・ナイトであり、本来の「千一夜」とはいえない
★日本最初のアラビアンナイト翻訳書
・日本最初のアラビアンナイト翻訳書は、1875年(明治8年)、永峯秀樹が英語から日本語に翻訳した「開巻驚奇暴夜物語(かいかんきょうきあらびあものがたり)」である
・「開巻驚奇暴夜物語」はタウンゼンド版によったと思われるが、部分的にはレイン版も併用されたらしい
タウンゼンド版はジョナサン・スコットの「スコット版アラビアンナイト・エンターテインメント」(1811年)を青少年向けにリライトしたもの
スコット版はガラン版の翻訳であるが、最終巻の第6巻には別資料からの物語も含まれている
スコット版は児童向けアラビアンナイトの底本となった
★ガラン写本は本来の「千一夜」の原形に近いものと思われる
ガラン写本282夜の途中で終わっていて、つづきは見つかっていない
「千一夜」の原形にはもともと結末はなかったのではないだろうか
ネバーエンディングストーリーとして「物語」は永遠につづく?