「幸福について」ショウペンハウエル 1


「幸福について」(ショーペンハウアー 新潮文庫)より少し抜き書き その1


・人生の幸福にとっては、われわれのあり方、すなわち人柄こそ、文句なしに第一の要件であり、最も本質的に重要なものである


 人としてのあり方のほうが、人の有するものに比して、われわれの幸福に寄与することがはるかに大であるにちがいない


最も直接的にわれわれを幸福にしてくれるのは、心の朗らかさである


 「多く笑う者は幸福だ」
 朗らかさは無上至高の財宝である


・外部から刺激を与えてくれるものといえば、大自然の所産と人間世界の動きに対する観察とである
 かつはまたあらゆる時代、あらゆる国々の天賦の才能に特に恵まれた人たちの多種多様な業績である
 これを完全に理解し感得する者はこの自分以外にはないのだから、こうした業績は結局自分ひとりが完全に享受しうるものなのだ
 だから自分ひとりのために、こうした先哲偉人が生きていてくれたわけだ


・普通の人間は、自己の外部にある事物を頼みにしている


 財産や位階を頼みにし、妻子・友人・社交界などを頼みにしている
 したがってこうしたものを失うとか、あるいはこうしたものに幻滅を感じさせられるとかいうことがあれば、人生の幸福は崩れ去ってしまう


・「まことの富は魂の内なる富ぞ、
 そのほかは益少なくわざわい多し(ルキアノス)」


・大衆が理解し歓呼して迎えるような功績もあるにはあるが、それはその当初だけで、あとになるとじき忘れてしまう


・ソークラテースはしきりに論争をしたために、暴行を受けることがたびたびあったが、平然としてそれを忍んでいた
 或る時、足で踏みつけられながら、じっとこらえていた


賢者は侮辱を問題としない


・労作が高級で難解な部類に属するほど、制作者みずから名声を身をもって経験することは稀である


自分も功績を立ててすでに名声を博している人でも、新たな名声の出現を喜ばない