☆ちょっとしたプロローグ☆

 あれは、いつの頃だっただろうか。
 僕が高校5年次に進級して、少したった頃だ。

 その高校は岡山駅周辺の再開発事業で、郊外にあった高校を

名称もそのままに移転させ、駅の表口である東口にイーストサイド、

コンベンション施設や岡山初進出となった全月空ホテルなどがある

西口側には、ウエストサイドと教育県岡山が満を持して、岡山駅周辺

再開発事業の目玉に据えたものであった。

 そんな岡山県立陶山高校に進学し、僕は5年次進級の際に実施する

地方研修に参加することになったのだが、その準備をめぐってある

事件が発生した。

 今となってみれば、笑いのネタになってしまうのだけど、当時は、

結構、腸(はらわた)が煮え繰り返った思いがある。

 実はイーストサイドとウエストサイドの校舎が入る部分は、主に4階

から6階で、地下から3階部分は岡山駅前に長年あった百貨店、鷹木間屋

を移転オープンさせたものだ。
 学校の受付と事務室、県の教育委員会の外郭団体、全県中学連携室が

1階にゾーニングされたが、これは再開発を指揮した建築家の夫馬研人氏

の発案によるものである。

 ちなみに、高校に5年次はおかしいと思われた方のために付け加えて

おくと、岡山県立陶山高校は中等部と高等部を抱える中高一貫校である。
 僕はそこに、高等部から編入したのである。
 先の全県中学連携室は、そのための窓口である。

 旧高校校舎は、中等部の校舎として、旧中学校舎は、今では岡山地域の

ベンチャー企業誘発のために、産学官連携をしたインキュベーション

オフィスに模様替えしている。

 さて、話題を高校5年次の研修準備の際に起きた事件に戻そう。
 事件なんて大袈裟かもしれないんだけど。

 あっ、そうだ。
 僕の名前は、松友宏文。
 親父の名前は、泰治郎。
 おふくろの名前は、美玲。
 話にはほとんど登場しないけど(何? 登場させてほしい?)、那亜瑠

(なある)って変わった名前のミス清水白桃に輝いた美人の姉ちゃんが

いる。
 高校時代はそれこそ、クラスメイトから「姉ちゃん紹介してくれよ」と

せっつかれたものだ。
 そんな姉ちゃんも、今では…やっぱりやめておこう。
 ブーイングされそうだけど。

 それでは、後程。


☆ホームルーム☆

「じゃあこれから、来月からの研修実施者を言うけん、ちゃんと聞いとけよ」
 6月のある日のホームルーム。
 担任の梶谷先生から、研修実施者が発表される。
「北海道研修は蒲谷君、山田君、中島さん、富士さん」
「長野研修は、木村君、能海さん、林原さん」
「東京研修は、福武君、尾羽世さん…あっ、すまん。松友!」
 なんとわざとらしい。
「先生ひでぇよ。わいだけ、呼び捨てじゃが」
「じゃけん、先に謝ったろうが」
「そりゃ、わいを呼び忘れた『すまん』じゃろ」
「はい。すみませんでした。マツモト君」
「…先生、マツトモですけど?」
「はいはい。申し訳ありません。松友ちゃん!」
「もう良いですよ。次に行ってください」
 内心、(この先公、反省してねぇな)とは思いつつ、相手をするのが疲れて

しまった。

「……という訳で、北海道研修は酪農実習。長野研修は、エイコーデプソン

の諏訪工場実習。東京研修は、アンテナショップでのマネキン実習をする

ことになったけん、やるからには一生懸命やってけぇよ」
 すると尾羽世さんが、手を挙げて質問した。
「先生。マネキンって、デパートとかで服を着せたりする人形のことじゃろ。

そんなのアンテナ屋さんに運んで何の意味があるん? マネキンの顔が

スナップの草鉤君の顔しとるとか?」
 梶谷先生の顔が一瞬固まったのを、僕は見逃さなかった。
 しかし、尾羽世さん、あなたのその天然キャラ、えぇなぁ。
「おはよー。あのなぁ、マネキンって、そのマネキンじゃのぉて、尾羽世自身

売り子さんするって意味なんよ。ちなみに、アンテナ屋さんじゃのぉて、

アンテナショップ。岡山県の物産品なんかを販売しょーるお店のことじゃ」
「先生、それ先に言うてくれんと分からんわ、うち。それに『岡山土産・物産

東京即売所』の方が分かりやすいわ」
(尾羽世さん、あなたの言う通りです。返す言葉もございませんです。

はい。)
 先生もそうだったのか、
「尾羽世の気持ちも分かる。まぁ、漢字で書いたらそういう意味じゃな」
と返事をした。

「今日はここまで。部活のない者は帰宅してよろしい。ただ、東京研修組は

残ってな」

 この後、例の事件?に発展していくのである。(つづく)

※この物語は、フィクションです。

 登場する人物名・名称等は架空のものです。

 博薫堂


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