「店長異動しちゃうでしょ?」
「へ?」
「あれ、波迫ちゃん知らなかった…?しまった。広めないでって言ってたから聞かなかったふりしてもらっていい?」
「そうなんですね。わかりました。…そっかあ。」
「さびしいね。」
「…さみしいです。」

店長さんが異動になると聞いたのは、見た目が大変かわいらしい(かわいいって言うと嫌そうな顔します)、しかし中はとっても男らしい先輩です。店長さんと仲がいいですから、そういう話をして知っていたのでしょう。
異動、つまり、この店舗からいなくなってしまう。会えなく、なってしまう。私が店長さんの元で働くアルバイトであったからという理由でしょうが、たくさんかわいがっていただきました。大変迷惑をかけてしまいましたし、大変面倒をみていただきました。……さみしいではないですか。この店長さんがいなくなるの。店長さんから直接その話題が出たとき聞かなかったふり、知らなかったふりを私はできるのでしょうか。

それから2、3日後。そういえば、と店長さんが切り出したのは異動になるという話でした。

「えっ、ええ?!店長異動するの?!」
「そうだよー。」
「いつ??」
「今月の終わりくらい?」
「えー!うっそー!びっくりした!ね、紘架さん!」
「び、っくり、してる。」
「ですよね!!」

はじめて聞いたならリアクションはもっと驚きめにしないといけなかったか!私は役者になれることはきっとないでしょう。ちょっとトイレ行ってきますというもう一人の子を送り出すと、店長さんがこちらを向きました。

「知ってた?」
「え?」
「驚いてなかったから。」
「…知って、ました。」
「そっか。」

こんなときどういう顔したらいいのかわからないです!笑えばいいというのは本当ですか?!笑え…なかったです。

「…さみしい。」
「さみしいの?」
「…やだぁ。」
「…うれしい。」

店長さんはそう思ってくれてうれしいよ、なんて頭をポンポンしてきました。とてもにこにこしやがりまして…。こっちはさみしい気持ちをやりきろうとしてますのに!とは言ったものの、店長さんとはまだ一緒に働くのでまったく実感がありません。
むしろ引越しが近くなっているのにまだ家決まってないと笑う店長さんをひたすら心配することにはなりますが。はよ決めろ。