誰もいない神域に

たゆたう霧が舞い降りて

ただ静かに、ただ清らかに

水の流れに寄り添っていました


「祓いたまえ 清めたまえ」と

何度も、心を込めて伝えるうち

鳥たちが囀りはじめ

拝殿には優しい気配が満ちていました


詞を届けたその時

空が少しずつ開いて

黒い蝶が、すっと前を横切っていきました


祈りのあとの空は

もくもくと立ち昇る入道雲

太陽の光が差し込み

「いま、届けられた」と

空が語るようでした


そして帰り道――

空に、十字の雲を見つけました

不思議と心が静かになり

胸の奥で、何かがほどけていくようでした


帰宅した頃には、突然の大雨

まるで、天からの還りの禊ぎのように

そっと、すべてを包み込んでくれました


祈りが届いたかどうか

それは、風や空や雲が教えてくれます


今日も、静かな祈りを

空に、地に、響かせながら

和多志として在り続けます