モーセやヨシュアと同じ時代に生き、犬に該当する人物といえば彼しかいません。そう、カレブです。
彼の名はそもそも「犬」という意味なのです。
カレブという名はイスラエル人の間でよく使われているようですが、ここではケナズ人、エフネの子、カレブを指しています。
このカレブは指導者となったヨシュアと近い年齢で、称賛されるべき功績を幾度もあげています。
各部族エース級の男性を募り、征服する目的地を偵察するように(民数13:1〜20)遣わされます。
おそらく40歳だったらしいカレブは、ユダ族の代表として名を連ねていました。
偵察の報告として、確かに産出性の豊かな土地ではあるが、そこにいる屈強な住民たちと、堅牢な城塞都市を攻略するのは不可能だと、12人中10人が諦め発言をします。そんななかカレブと、エフライム族代表のヨシュアの2人だけは「神が味方をしてくれるから、必ず彼等を追い散らして、この土地を奪べきだと」強く主張し、意見の対立した多数派メンバーから命を狙われる騒動にまで発展します(民数14:1〜10)。
その不満が神の不興を買い、荒野を40年さまようとことになります。この時60万人以上いた成人男子のうち、生きて約束の地に入ったのはヨシュアとカレブ2人だけでした(民数26 :65)。

その日から45年、約束の地に入って5年たち、各部族ごとに領地の配分をするとき、カレブは偵察の時に見ていたヘブロンという土地に思い入れがあると話しはじめ、いまだ居座る巨人族の原住民を追い散らすから、そこを領地として自分と子孫たちに与えて欲しいと願い出て(ヨシュア14:6〜15)、見事勝ち取ります。
そもそもイスラエル人であれば土地の配分は保証されていたのですが、カレブはなぜここまで強く主張したのでしょうか。
さらにカレブはこの戦いに功績をあげた者を自分の娘を娶らせと約束する(ヨシュア15:13〜19)など、一国の首領たる振る舞いをしているのです。

ケナズ人とはエドム人の一部族に存在しています(歴代一1:36.51〜54)。途中で弱体化したのか、イスラエル人に従い、婿入りするなどしてユダ族に加わりながらも、エドム人ケナズ族の首領を勤めていたのがカレブであった可能性があります。
そのため土地の配分が確約されておらず、特に実力をとアピールする必要があったのかもしれません。

もともとユダ族はイスラエル民族を代表してリーダーとなる約束がありました(創世49:8〜10)が、エジプトを出た時はレビ族のモーセ、約束の地に入る時はエフライム族のヨシュアがリーダーとなっており、不満があったのかもしれません。
とくにエリコ攻略後アイという小都市攻略に失敗した時にはアカン一家のネコババが吊るし上げられ(ヨシュア7:10〜26)、立場が弱められていましたが、カレブの活躍と、最後のヘブロン攻めで戦功をあげた甥のオテニエル(士師3:9〜11カレブの弟もケナズという名だった)がヨシュアやカレブの世代に代わる、初代士師となり溜飲を下げました。
ユダ族は南に領地を広げて行き、境界はエドムと接しました。またアナク(シュメール伝承で天から降った巨人・アヌン-ナキ?)の子ら戦ったことは、出雲や鬼と戦うイメージに重なります。
 ※クジャクはキジ科の鳥
あとは猿と雉ですが、これはソロモンが貿易した時の「クジャクやサル」を思い起こさせます。
色鮮やかな鳥の剥製はヨーロッパで珍重されていましたが、輸入の途中で腐敗するため、脚が切り落とされていました。それが誤解され、地上に降り立つことなく、永遠に飛び続ける「極楽鳥」と呼ばれていました。キジもクジャクに劣らず鮮やかな色合いを持つ種類が存在しています。
エドム人に従っていたヒビ人の中で洋上貿易で珍しい品を集めてくる働きをすると知られていて、エドム人勢力のなかからイスラエル側に寝返った一団がいたことを伝えるのが、桃太郎の下敷きなのかもしれません。