生きていたら

君は来月で35歳になるんだね。

まだ35歳だね。

ママが死んだ年に、

あの時君はまだ二十歳だったね。

家のお墓を継ぐのはパパの次は君だから、改葬の為に、

青森にあるお墓をこちらに移したんだよね。

私の考えで。

青森では遠すぎて、

誰もお墓参りには行けないから、

仏壇も家にあるから、

ママの死を機会にお墓を新しく建てて。

その為にパパと君と3人で青森まで行ったよね。

初めての夜行バスで、手続き1つ漏れたらまた行かなければならないからって、

入念に石屋さんに必要な書類のリスト作って貰って、力になってもらって。

完璧に日帰りでスムーズに事を済ませたよね。

帰りは新幹線で、はやぶさが満席だから、

仕方なく各駅停車の新幹線で5時間以上かけて帰ってきたよね。

途中で停電になって新幹線の中真っ暗になったりして。

でも、今思えばそれも含めていい思い出になったね。

今はもう私だけの思い出だね。

新しいお墓に、ご先祖さまとママを納骨して。

まさか君が次に入るなんて、その時に誰も思いもしなかったよ。

君だってそんな事考えで無かったよね?

それとも、

もう、ママの居ない世界に絶望していたのかな?

墓標を見る度、ママとパパの間に挟まれて

君の名前が刻まれて居るのが、

何だかあまりにも自然すぎて、

何だか、とても幸せに見えてしまって、

そんなの可笑しいよね。

どうして、この世ではないの。








アルバム見てたら、君の幼い頃の幸せそうな顔。

幼なじみの女の子といつも遊んでいたよね。

本当に優しいから、女の子にモテたよね。

パパと一緒に休みになれば電車に乗って一日中遊んでたね。

電車の大好きな君。

君の事が可愛くて仕方のないパパ。


この頃が1番幸せだったんだよね。

高校に入ってからは、化学部の部長にもなって、勉強の成績もグンと良くなって、君は本当に大きく成長したよね。

高校を卒業して、希望の東京電機大学に入って夢を膨らませて通って居たのに、

ママの学費の納入ミスで大学を辞めさせられた事が君の大きな挫折になったんだよね。

それでも君はその後湘南工科大学を受験し大学生に戻りました。

だけど、一度折れた心が弱い君をドンドン押し潰していってしまったね。

君の死への道が全てはそこから始まったのかもしれないね。

あの頃そんな大変な事が起きていた事に気がついてあげられなくてごめんね。


そして最後の写真は君が自殺する9ヶ月前。

最後の家族旅行になった金沢旅行の時の旅館で一人くつろぐ君を私が撮った写真。

この写真を撮った時。

私は何故かとっても寂しくて、

何故かとても不安でした。

いつか君が居なくなってしまうんじゃないかって。

そして、こうして君の事を思いながら、

この写真を寂しく眺める今日が来ることをどこかで感じていた私がいた気がして……。