以前住んでいた家のそばでよく見かけたワンコ連れのおばあちゃん。
見た感じ80過ぎくらいの品の良さげなおばあちゃんは、年老いたラブラドールレトリーバーといつも一緒に歩いてた。
身体の大きなラブラドールは、その体躯を前進させる為プルプル震える脚で一歩一歩地面を踏みしめるように歩くのだが、10メートルと進まぬうちにやがて歩道にペタンとヘタリ込む。
そんな時おばあちゃんは急かすでも起こすでもなく、ワンコが自力で立ち上がるまで優しい顔をしてじっと待つ。
いつも二人の時間はとてもゆっくりと流れていた。
何度か顔を合わすうち、言葉を交わすようになった。
『昔はよく引っ張られたもんだけど、今は休み休み、それでも歩きたいんだもの』
若い頃は意気揚々とおばあちゃんを先導したラブラドールも今は立場が逆転、今度はおばあちゃんが先導する番だ。
それでもワンコもおばあちゃんも嬉しそうだった。
そうしてまたゆっくりと歩いて行く二人の後ろ姿を見送ってから18年経つ。
きっと、この二人の姿を見かけることはもうな いんだろうと思う。
でも本当に幸せそうだった。
そんな事をふと思い出した。
