「7月末完了」の欺瞞 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

新型コロナウイルスに感染した重
症者が今月に入って、全国で1日
1000人を超えた。大阪では連
日40人以上が亡くなっている。身
近がすくむような恐怖を感じる。
頼りはワクチン接種だが、政府の
配給日程がコロコロ変わって信用
できない。菅義偉首相は高齢者接
種を「7月末に終わらせたい」と
発言したが、何ら明白な根拠を示
せなかった。注射を打つ医療担当
者の接種率がまだ2割台にとどま
る酷薄な現状で、そんな短期間で
完了などできるできはずもない。
公然と嘘をつくリーダーの存在そ
のものが、コロナ禍の悪化に追い
打ちをかけている。


放送メディアからは連日高齢者が
ワクチン注射を打つシーンが映し
出される。しかし、身近にまだ打
った人は一人もいない。実体がと
なわない欺瞞に満ちた画面をたれ
流すのは、まるで戦前の大本営が
戦果をプロパガンダ(宣伝)にし
た手法と同じだ。そんなテレビ番
組をハシゴした河野太郎担当相も
「全高齢者が6月末までに打てる
量を自治体に届ける」と胸を張っ
たが、自治体には「1日でも早く
打っていただきたい」と丸投げ姿
勢だった。


打つ人が足りないのに、できるは
ずがない。先月国内の接種ペース
はわずか7万7000人で、高齢
者3600万人の2回接種完了は
全然見通しが立たない。ある試算
では、週平均の接種ペースを直近
の41倍にした約553万回にしな
いと間に合わないという。まず不
可能な数字である。官邸記者らは
菅首相に、「7月末完了にどんな
根拠があるのか」と強く迫るべき
だ。政治で最も大事な国民の命と
安全に関した発言で、偽装や欺瞞
はけっして許されない。先月末の
衆参院3補選での自民全敗は、有
権者の政府への鉄槌だったと言え
るが、首相はまだ懲りていないよ
うだ。それどころか、「すぐに収
まる逆風にすぎない」と居直って
いるかのようだ。


ここにきて、インドからの変異株
の脅威も押し寄せてきた。二重変
異の猛威を持ち、インドでは1日
30万人もが感染、日本でも3月に
8人、先月78人の陽性者が出てい
たのに、空港検疫など水際対策を
強化していなかった。すでに市中
感染が始まっていつ恐れがあるの
に、ゲノム解析はごくわずかしか
されていない。インド変異株はワ
クチン効果を提言させ、感染力も
これまでの2倍以上あるとされる
。ようやく今月1日から検疫が強
化されたが、加藤勝信官房長官は
格段の注意が必要なのに会見では
何も要請しなかった。


加藤官房長官に危機感がないのは
厚労相相だった時からである。昨
年春、勝手に「37・5度で4日間
」ルールを作り感染者の入院を抑
制した前歴がある。こんな人物が
政権の中枢にいる不幸を思わざる
をえない。話はそれるが、加藤官
房長官は先日大恥をさらした。興
行自粛を求められている伝統芸能
について言及した時、寄席を「ヨ
セキ」と読んだのだ。未曾有を「
ミゾウユウ」と言った麻生太郎元
首相以上の恥ずかしさで、SNS
では一挙に拡散してしまった。あ
まりに常識が欠如した政府の広報
責任者が今後ますます信用されな
くなる。落語家の立川談四楼は文
化芸術に興味なく生きてきた人生
を「メッキが剥がれた」と嘆いて
いた。


感染爆発が止まらない現状で、11
日に緊急事態宣言解除などできな
い。専門家の多くが感染者第二ス
テージにならないと、7月の緊急
事態再宣言は必至であるとデータ
を示している。政府は対処すべき
は五輪中止決定とワクチンの接種
人口の早急な拡大である。


    【2021・5・3】


(次回は都合で13日に掲載します)