どんより淀んだ空の休日。
手早く昼食を済ませ、
昼過ぎからの
オンラインお見合いの準備を進める。
本日のお相手は
④33歳 お嬢様さん
プロフィールは↓
お写真の笑顔がかわいい。
プロフィール的には、
ごくごくよくいる婚活女性。
某企業の社長令嬢、
という点を除いては。
どんな話をするか、
シミュレーションをしながら
ビデオ通話のルームへ入室する。
ほどなくして、
仲人さんの説明が始まった。
さすがにもう、
オンラインお見合いも手慣れてきている。
お見合い相手を、
仲人さんと間違えるようなことも
もうないだろう。
説明がおわり、画面が暗転。
しばらくすると、
お相手の姿が映し出される。
最近はこの流れで、
予想外が続いている。
期待しすぎてはいけない。
映し出されたお相手は、
これは、
なんというか、
普通?
写真から比べると別人だが、
普通である。
ただ、ライトはたくさんたかれている。
対策はしっかりしているようだ。
別な意味でガッカリしながらも、
お見合い会話を開始する。
「こんにちは、音声大丈夫ですか?
よろしくお願いします」
「大丈夫でーす^_^
よろしくお願いします」
「じゃあそうですね、
お仕事は事務をされてるそうですね」
「はい、新卒からずっとになりますね」
なるほど。
親の会社に就職してずっとそのまま、かな。
この後も、
仕事や勤務地の話。
よくある趣味の
旅行、映画の話。
と、これまで何十回と繰り返してきた
お見合い会話を続けていく。
そうして、
「・・・・・・」
プロフィールの話題が尽きた。
「・・・・・・」
沈黙が続いているが、
お相手から話を振ってくる気配はない。
引き続き、こちらの様子をうかがっている。
(仕方がない。
自分の話ばっかりするマンになるか)
学生時代の話や、
テレビの話などをしていく。
最近、すっかり忘れていたことがある。
普通の女性には、
なんら興味が湧かないことを。
ここでいう普通とは、
個性がないように見える女性だ。
経歴や趣味が変わっている、
というのはわかりやすい個性だが、
それはほんの一部であって、
そういうことではない。
個性がない女性など存在しない。
単純に見えない、
見せようとしない。
つまり、その人の
人柄や成り立ちが見えない女性
ということになる。
したがって、お見合いにおいて、
社交辞令や、
ビジネス上の相手のような受け答えは、
マイナス印象になる。
少なくとも、
お相手の人柄や成り立ちに興味を持ち、
それをかわいいだとか感じる、
自身にとっては。
***
**
*
「あ、そろそろ時間ですね^_^」
話の腰を折り、
お相手が切り出す。
「では、今日はありがとうございました」
お見合いのルームから退室した。
相談所へ、お見合いの結果を送る。
「今回はお見送りでお願いします」
交際中の相手がいなければ
交際希望を出すと思う。
まだまだこのあと、
お見合いがいくつか控えている。
お相手の見た目的には、至って普通。
むしろまわりからは、
チヤホヤされているかもしれない。
失礼なところも、どこにもなかった。
しかし、
完全に距離感を保って
話しをされていた。
楽しい話、笑い話、色々用意はしてあるが、
とてもそんな話しになりそうもなく。
こちらの人柄も見えないだろう。
お相手の印象はゼロだ。
ないものはどうにもならない。