前回、
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まだまだコロナ禍。
ラウンジの中は客がまばらで、
かえって話し声が聞こえてしまいそうだと感じる。
「じゃあ奥の席へどうぞ」
ゆったりとした席につき、お互いの飲み物を注文。
一言ふたこと、他愛無い会話をしていると
すぐに店員さんが飲み物を運んでくる。
さて、ではそろそろ。
お見合い開始としますか。
「営業のお仕事って、もう長いんですか?」
「ええまあ、かれこれ6年ほどになりますね」
「6年ですか、長いんですね。例えばどんなお仕事なのか、もう少し詳しく聞いてもいいですか?」
「新宿とか渋谷とか、この沿線沿いに契約企業様がたくさんあるんですけど、そちらに新しい商品のご案内ですとか、既存の契約周りのご説明でしたりとかでよく伺ってます」
「へー、BtoBなんですね。じゃあお仕事終わりに新宿のお店とか行って、色々お詳しかったり?」
「あー。そうですね^_^」
・・・・・
あたりさわりのない、表面的な会話。
出だしとしては及第点かな、なんて判定する。
・・・・・
「HiMさん、○○されるんですね」
「ええ。まだまだ始めたばかりなんですけどね。ご興味ありますか?」
「周りでもやってる人がいて、☆*のところとか楽しそうだなって^_^」
「そうですね、☆*もいいですね」
的はずれなので、あまり興味はおありでない、と。
せっかく振ってくれたけど、話題を変えよう。
「営業さんは旅行がお好きなんですよね、どんなところに行かれました?」
「国内だと○×△とか、○×*とかですね。ご存知ですか?」
「へー、どんなところなんですか?」
「えーとですね、○×△は・・・〜〜〜
・・・・
一問一答ではないけれど、二言三言ぐらいで話題が終わる。
そうして、短いスパンでまた次の話題へ。
まるで接点を見出せない。
お互いに、興味があるように繕っているが、
お互いに、そのことは透けて見えている。
・・・・
「あ、もう1時間経っちゃいましたね」
「いつの間に。ではお開きにしましょうか」
会計を済ませて、店を後にする。
「今日はありがとうございました^_^」
「こちらこそ。それでは」
そう言って、待ち合わせた駅で別れる。
またお会いしたい--
お見合いで別れ際に伝えるセリフを、
今回は口に出すことはなかった。