自分はトータルで10年近く交通量調査という仕事で生計を立てていた。交通量調査という仕事を理解していない人から見ると、椅子に座ってポチポチボタンを押しているだけの楽な作業と思われがちだが、実際はボタンを押すだけのお気楽な仕事ではない。朝は早いし、夏場は暑さ・冬場は寒さとの戦いになるし、仕事内容を理解していない地元住民とのトラブルもあるし、酔っ払いに絡まれることも経験してきた。体調を崩しても簡単に交代・欠勤は出来ないし、急な尿意や便意が発生してもすぐトイレに駆け込むことが難しいし、交代が来るまでに我慢出来ずにお漏らしした調査員は何人もいる。
そして交通量調査は何よりも「データの正確性」が重視される。人間の場合、調査経験の長さややる気等でデータの精度にバラツキがどうしても生じてしまう。自分が経験した場合だと、調査開始からものの数分で居眠りしてしまう者や、スマホ操作に夢中で禄にカウントをしない奴もいたし、そもそも交通量調査や車種分類を理解していないため、例え大型車両が通過しても普通車でカウントしてしまうアホウもいた。また目の前を通過する人間を性別・年齢に関係なくただカウントすればいいのにそれすら出来ない奴もいた。
近年、調査機材の進歩によって常時交通量調査が可能になり、またAIの導入によって車種分類や人間であれば性別・年齢別での細やかな分類が可能になり、通過人員や通過車両の正確さも人間とは比べものにならない。そのため2021年から徐々に人間による調査は減少し、3・4年後には人間の手による調査はほぼなくなるであろうと思う。
自分はこの流れを数年前からなんとなく把握しており、就活の結果、ようやく定職を見つけることが出来たため、心置きなく引退することが出来たのである。今は午前9時から午後5時30分の仕事に就いており、平日の週5日勤務で、土日休み、交通費も全額支給されるし、福利厚生も充実している。交通量調査の時と比べれば日銭を貰えないという以外、いいことだらけである。
交通量調査の時代は、朝は大体7時スタートで、集合は1時間前というのが基本のため、場所によっては始発電車で間に合うケースもあるが、間に合わない場合は自主前泊(自腹でネットカフェやホテルを利用する)か会社が指定する場所に前日集合し、会社側が用意したワゴン車やマイクロバス、大型バスで現地近くまで移動し、サービスエリアや道の駅といった施設で待機していた。
交通費が全額支給されるケースはまず存在せず、大体給与の中に1000円ぐらい含まれているので、現場が遠かったり自主前泊したらその分赤字になる。これ以外に食事や飲み物等も自腹のため、仕事によっては給与の半分残れば御の字というケースもあった。
調査時間は12時間か24時間が基本で、勤務時間は2時間調査・1時間休憩のサイクルになる。基本的に3人一組で組むため、ローテーションによっては1時間早く帰れるケースもある。たまに2人で組む場合もあり、その場合だと休憩時間が2倍に増加する。調査地点によっては交通量や通行量の少なくなる夜9時か10時頃から翌午前4時か5時頃までの間、調査地点を統合して休憩ローテーションを増やすケースもあるが、依頼主や調査会社、責任者である現場監督によっては行わないケースもある。
またこういう調査でおなじみなのが地元住民とのトラブルである。交通量調査は事前の下調べで調査地点を決定し、それを元にして役所や所轄警察署と協議し、決定した調査地点で道路使用許可証を申請するため、調査地点の変更が出来ないケースが結構ある。よくあるのが店舗前や住宅前が調査地点に設定されているケースで、店舗側にしてみれば営業妨害とも取れてしまうし、住宅なら常に見られているというプライバシーの侵害ということから、クレームを付けてくるケースが結構ある。調査地点の変更に関して柔軟な態度を取っている依頼主や会社、現場監督なら申告すれば場所移動も出来るが、ケースによっては場所移動NGもある。そうなるとあとは現場監督や会社側に交渉を任せることもあるが、酷いときには警察沙汰になるケースもある。あと調査地点の申請は会社によって異なり、○○町1丁目内とかで申請すれば、その町内であれば自由に調査することが出来るが、○○町1丁目○○番地とかで指定されると、指定箇所以外で調査をしてしまうと道路使用許可証がない状態での調査になるため違法となってしまう。
だが警察沙汰になると、呼んだ側(店舗や住民)が負けるケースが大部分である。なぜならば調査する側は関係する役所や警察と協議し、警察から道路使用許可証を、役所からも調査許可を得ており、役所と警察双方からお墨付きを得ているのに対し、店舗や住民の場合、歩道等に看板や植木鉢・プランター等を勝手に設置しているケースが多い。私道でない限り無許可で国や都道府県・自治体が管理する車道や歩道に物を置くことは出来ないので、それを指摘されると大体は黙って引き下がるのである。
それでも執拗に食い下がる輩は少数ではあるが存在し、店舗や住宅前に水を撒いたり、店員や住民が代わる代わる話し掛けてきて調査を妨害するケースもあった。
体調不良についてだが、どんなに日々の体調管理に気を付けていても風邪を引くときは簡単に引いてしまうし、調査途中で体調を崩してしまうケースもある。自分は常に風邪薬と頭痛薬、正露丸に吐き気止めの薬を携帯し、地方の調査であればトイレットペーパーを持参し、万が一お漏らししたときの対処として着替えも準備していた。人によってはトイレが近いという人もいるので、おむつを穿いて調査に臨んでいた人もいた。今では笑い話だが、調査をしていたときには真剣にこれらについて考えていたし、対処もしていた。尿意や便意は一定時間は我慢出来るが、やはり駄目なときには駄目である。また調査地点によってはコンビニやドラッグストア、スーパーといったトイレを設置している施設がない場合もあるし、営業時間外や定休日の場合もある。また今だとコロナ感染対策としてトイレの貸し出しをしていない店舗もある。また実際に体験した中ではトイレ使用1回100円を徴収していたガソリンスタンドもあった。そして自分が体験した最大の事として、調査地点からトイレのあるコンビニまで片道25分ということもあった。そうなると移動途中で我慢出来なくケースもある。尿意であれば立ちションという手もあるが、便意だと簡単にすることができない。調査員にとってトイレの悩みというのは一般の人が考える以上に深刻な悩みなのである。
長文になってしまったので、何回かに分けて投稿しようと思うので、今回はここまでとします。