昔、コロンビア北部にアグエネス・カーロという男がいた。
男は椰子の木が海岸にそってのびる、小さな村の
ずっと入っていった白い家に住んでいた。
家は海から平坦に伸びる白い道をほんの少し
入ったところにあり、そこを訪れる客人は
ずっと迂回して浜辺にでなければならず、
年々、男のもとを訪れる者は少なくなっていった。

アグエネスには親戚と呼べる身内がいなかった。
数十年ほど前、革命と称した反政府ゲリラに
片腕と前歯と足の指を奪われたが、
妻と子供を失ったことがすべてのやる気を
なえさせていた。
その年、国から支給された白いベットも、茶色く彼の
やせ細る体に沿って凹み、今ではひどく色あせていた。

村は漁で成り立っていたが、今年はまったくの不漁で
村民はやせこけ、不虞を負った男と対して区別がつかなく
なっていたほどだった。
そんな年、彼は珍しく夢を見た。
長いことみなかった夢につかの間の充足感を
覚えたのが、翌朝全て忘れてしまったことに
元々悲観的であった彼の心をさらに落胆させた。

その日の朝は、風も海も穏やかだったが
太陽だけは厳しくそそがれていたようだった。
あまりの暑さに失った腕で起きあがろうと
したため、バランスを崩してベットから崩れ落ちた。
海へ出る道は長いこと使用されていないため
道か藪かは分からなくなっていた。