オーダーシューズのリュウスケカワムラです。
なんとも間があいてしまいました。それなのにまた見に来てくださり、誠にありがとうございます。
昨年末(2023)にオーダーシューズのリュウスケカワムラを閉店、廃業することを決めました。
靴職人の高齢化と後継者不在、がその理由です。
そんなの、もう何年も前からわかってました。5年前には「今から5年経ったら75歳は80歳だよなぁ」とか思ったりして。
なんとか出来なかったのか?
なんとかしたかったので、若い人を迎えたり、m&a(企業や事業の譲渡や売り買い)の話を進めたりしていました。
すぐに辞めてしまう若い人が多いなか、ひとり着実に腕をあげて職人となった人もいましたが、たった1人では現在のやり方でレディースのオーダーシューズは作れません。じゃ、もっと若い人を増やせば良いのですが、人件費を増やせない経営状況なのです。
コロナ禍が明けて『働き方改革』があり、本当に多くの人が外に出る機会が減りました。当然ながら当店の靴が必要な人も減って、開店しているのに休業状態が続きました。
そんな苦しい経営に眉根を寄せていた私ですが、あるお客様の言葉にハッとして目が覚めたことが、決断を後押ししたのは間違いありません。
「着物を着る人が減って呉服屋さんがずいぶん減ったけど、ユーミンのご実家の呉服屋さんはやってるそうよ。」
そりゃユーミンさんのご実家ですもんね…
「スニーカーを履く人が増えて、電車の中でも革の靴を履いてる人をあんまり見ないけど、靴屋さんはやっていけるの?」
あー、そうですねー、ウチ、ユーミンさんいないしなー…
さらに2023年末、ひさしぶりの同窓会で表参道、渋谷、代官山あたりに出てみると、タクシーが余ってる!歩いてる人が少ない!お店の明かりが点いてない!いや、全部じゃないんですよ、もちろん。
代官山、渋谷間は私の感覚では歩いて15分、タクシー乗っても15分、です。道路はいつもタクシーで混んでるから、距離は近くてもなかなか渋谷駅には着かないんですよね。でも同窓会が終わった夜10時過ぎ、「今日はハイヒール履いてて疲れたからタクシー乗っちゃおう!」と手を上げるとすぐにタクちゃんに乗れました。そしてあっという間に車は渋谷駅に。。。
あれ?
行きも帰りも、タクシーの運転手さんは同じことを言いました。
「人が出て来てないからね。飲食店も8時9時で締めちゃうんだよね。だからタクシー、すぐ来たたでしょ?」、、、、、、
あああ、ここでも『働き方カイカク』が、、、、
飲食店の営業時間が今現在どのようになっているかはわかりませんけれど、靴を履く人が年末から現在までに増えたとは思えません。
50年前、私が小学生のころ、授業参観日には1クラスに必ず2,3人のお着物をお召しのお母様方(当時お父様がいらっしゃることは稀でした)がいらっしゃいました。和箪笥の樟脳の香りが教室に漂ってきて、なんだかソワソワしたものです。
でもホラ、今、ありえないでしょ?お子様の授業参観に正装としてお着物を着ていく、なんて。私が娘の授業参観に行ったときは(すでに20年前ですけど)仕事を早終わりにしてハアハアゼイゼイ、なんとかマトモに見える黒い服を着て行くのがやっとでした。
もしかすると30年後には、
「昔は革靴っていうものがあったのよぉ~」
「なあにソレ?」
「動物の皮をなめしてレザーにして、それで靴を作ってあるのよ〜」
「まじ?ソレ、なんか野蛮?」
なんてことになっているんじゃないでしょうか。
商店街から呉服屋さんが減ったのは、着物を日常的に着る人が少なくなったからです。
革靴も、日常的に履く人が少なくなれば革靴屋は減るんです。
そして日本の景気はそう簡単には良くならないと思うんですよね…
バブルの時代、ショップの棚に乗っているものを全部買うお客様が、まあまあいらっしゃいました。棚買い、とか言ってましたよ。そこまでじゃなくっても、おしゃれをしてお友達やパートナーと一緒にキラキラした気分で外食をするとか、お洋服に合わせて靴を選ぶとか、トレンドは靴からだから(自分のファッションが)古く見えないようにシーズンごとに靴を新調するとか、かつては『普通』だったんですよ、、、『棚買い』は普通じゃないですけどね。
この文章の『靴』を『スニーカー』に変換すると、まあまあ、あてはまる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
スニーカーが悪いとは言ってないんですよ。スニーカーで通用する場面は劇的に増えていますからね。今やドレスコードがある高級レストランでも、高級スニーカーは注意されないんですって。←当店のお客様、談。
ドレスコードと言えば、ジャケットと革靴着用(男性)、でしたからねえ、かつては。。。
世の中は変わっていくんです。
店名になっている、河村龍介がこの世からいなくなって、靴のデザイナーだった私が引き継いで7年目となります。たくさんのお客様に恵まれて、腕のいい職人にも恵まれて、お客様に喜んでいただける靴がそこそこ作れたと思います。
楽しいことも多い7年でした。
お客様との出会いは私どもにとって、かけがえのない財産です。
たくさんの経験は、お客様それぞれの靴作りにつながりました。
何度申し上げても足りることはありませんが、本当にありがとうございました。
皆様、オーダーシューズのリュウスケカワムラは閉店しますが、急には無くなりません。
店の2階に靴工房があって、ここでは現在も毎日、靴職人がお客様からのオーダーの靴を作っています。
閉店の前には大大、大セールもしますので、どうぞ情報をお待ちくださいませ。
引き続きブログでは、靴を通して気が付いた足や健康、素材やファッションなどについて発信していきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。