カタ、カタ、カタ、カタッ!
真夜中、2時を過ぎるか過ぎないかの時間で一人記事を書く。

「もう真夜中か」

 少し嫌な感じにため息を吐きながら音を立てるキーボードからほんの少し目を離す。

「記事を書くのも楽では無いな。」

一つの記事を書くのにも色々考えないといけない事がある。例えば「今回どのような事を書くべきなのか」とか「どう表現すればいいのだろうか?」などなど、ここまで考えるのは自分だけかも知れない。他の人は経験したことを簡単にインプット、アウトプットできるので簡単に複数の記事を書けるのかも知れない。だが、自分にはそのような才能も、事象もない。平凡でつまらなくて、意識が遠のいてしまうほど絶望した毎日しかない。

「まだ時間的に書けるな」

一口9%のお酒を含んで喉に通す。

 しかし、そんな自分が今回記事を書こうとした理由は


この記事を自分で見つめ直したからである。

今はられている記事は最初の方に書いた青臭い理想が描かれている記事だ。

しかし、今の自分が、どうしてこれを見て記事を書こうと思ったのか、経緯と自分の創作したものに対しての心の変化と過去の追憶の物語をこの創作大賞に投稿させて貰いたい。
https://note.com/hiroki5917/n/ne17a89e6b659

遡ること1週間前。

「着いたー」

暑くて気だるい体を意識というリードで無理やり引っ張って連れてきたのは




鞄は自分の鞄です。


このカプセルホテルだ。

「いや〜、ここまで来るのも楽ではなかった。」
  
自分は、名古屋の栄で呑み歩きたいと衝動的に感じた為、ここまで来たのだ。

「ここはお酒も飲み放題だし、温泉はサウナ付き、しまいには4000円ぐらいだから安いよなぁ。」

 と、ベッドに横になってカチッとスマホの電源ボタンを押す。

「あっ。noteから通知が来てる。」

その通知にはこのように書いてあった。

「あなたの記事がいいねされました。」

この言葉を目にした時に画面を開く。出て来たのは昔、自分が記した記事。この時の記事を見ると心が少し重くなる。

「まだ怖い物を知らなかった時期の記事」

色々な物に嫌気が差しながらもそれでも救いたいという思いで書いていた頃・・・・今の自分を見た時になんて答えるだろうか?

(ああ、考えるのはやめた。)

 自分は、スマホを見るのをやめて目を閉じる。恐らく、今日の疲れが出てきたのだろう。昨日まで働いて、チェックインの為にいつもより少し早く起きて、動いているのだから。

(起きてから何しようかな?)

 それを最後に意識は途切れる。



 意識が目覚める。そこを見ると、とても眩しく。青空が目に入る。

「ここは?」

自分が発してしまったのは、そんな何の変哲も無い言葉。我ながら、今思うともっと面白い言葉が出て来たはずだ。しかし、出て来なかった。人間、無意識な所など

「『自分にもわからない部分が多い。』」って言いたいんでしょ?」

 自分が聞いたのは青空以外見えなかったところから聞こえた。その声を聞いた時に体を起こす。

「今の声って」

 そう。聞き覚えのある声。首を振り回す。視界に入るのは多くの彼岸花のような花。
 赤、白、黄色の三つのお花。左に首を向けた時、一人の男の子がいる。その子は髪がボサボサで、背が小さく、黒髪の大学生がどこか遠くを見つめていた。

 そんな不思議な彼に自分は近づく。

 カサ、カサ、カサ。足元の花々を掻き分けながら進んで行く。少し青くさく、虫も居ない。明るいのにも関わらず暑さも感じない。いまだに何も見ない彼に近付く。彼に近づけば近づくほど誰なのかよく分かった。

  

それは、あの記事を書いた自分だ。


 彼は、何を考えているのだろう?そして、自分と話をした時に何が起きるのだろう?そんな事を考えながら彼のすぐ近くにまで近付く。

「きみ?」

「・・・・お兄さんは今は何をしてるの?」

 彼が顔を合わせない理由もなんとなく分かる。少し怒っているのだろう。彼はきっと、思ったようにならなかった自分に対して、八つ当たりの様に怒ってるだろう。そんな彼に対して自分は彼の隣に片膝をついて座る。

「そうだな〜。君が嫌っているつまらない大人になってしまったかな。」

「楽しい?」

「いや。クソつまらないし、誰も助けられてないよ。」

自分は強く強張った拳に力をさらに入れる。

「君が言っていたようなことは出来てないし、自分の記事には誰も助けられる事が出来ないのも気づいたよ。」

 そうさ。自分が書いているものでは何も救えない。ただの自己満。自分の記事を書いた時のいいねを気にしていた。自分の過去に記事が評価されればされるほど、最近の記事が自分にとってとてもつまらなく、無価値なものだと感じてしまう。記事を書いている人なら分かるかもしれないが、今の自分より過去の自分の記事が評価されることはそれだけ突き刺さり、心を抉るものだと思っている。だからこそ、自分は何処かを見ている彼の凄さも分かっている。

「そう」

 彼は視線を下に落とす。未来の自分の姿、言葉がとても刺さっているのだろう。きっと彼は、今行っていることの無意味さに打ちひしがれているのだろう。この頃の自分は誰よりも自分がすごいと思っていたに違いない。記事にいいねをしてくれた人も彼の助けたいという想いに惹かれたのだろう。

「でも、そこには理由があるんだよ」

そんな彼に今の自分は力強く口にする。

「理由?」 

 少し目を丸くして、何かとても惹かれてるような顔をしながらこちらを見つめる。そんな彼に少しほほえみながら口を開ける。

「それは、知らないからだよ。」  

「知らないから?」

  声が少し裏返りながらも口にする彼に少し笑いながらも答える。

「笑ってごめんね。うん。例えば、君は本当に苦しんでる人は子どもだけだと思ってるかもしれない。記事を見てくれる人が高校生ぐらいの子だったらって思ってる。」  

「違うの?これからはそういう子たちが未来を創って大人たちがそんな彼らを支える!そうしたいから、そうなって欲しいから記事を書いてるんじゃないの!?」

 食い気味で、熱く語る彼。威嚇する猫のように目を見開いて、訴えてくる。あぁ。何かを語るときの自分はこんな目をしてたんだ。

 それだけ記事を書くことに本気になってた。

 自分はnoteで記事を書くことが好きだったし、本気で救えると信じてたんだ。だけど―

「高校生でも人の痛みを知ってるのはほんの一握りだし、助けたやつに騙されるなんてことも世の中あるんだ。」

 彼は言葉を詰まらせながら立ち尽くす。

「そんな経験、君にはしたことないだろ?」

 彼はコク、コクと頷く。

「俺はそんな経験もしたし、他にも酔い潰れて他人のアパートに行った・・・・拉致されたことも経験したり、大金を失う経験、詐欺にあった経験もしたさ。」
 
 今思うと、大人になってからろくな経験をしてないな。うん。どれだけ不幸な目にあっても「最高!」とかほざいてたほうが人生まじで楽かもしれない。けれど、今の彼に伝えることはそんな不幸話でもない。今頑張ってる彼に伝えること、それは変わらない自分の信念。

「でも、それでも。困ってる人は助けたいかな。」

 その場に風が吹き、花たちがユラユラと揺れる。

「どうして?」

「ん?」

「どうして、そんなになっても!自分が傷ついていても助けるんだよ!!」

 うわぁ~、めっちゃ泣きそうになりながら言ってるよ。この子。親とかに「可愛い」とか何とか言われてる理由がよくわかるわ〜。っと、本音か漏れてしまった。恐らく、彼に自分の黒い部分が漏れてしまったかもしれない。そうだとしても、泣きそうな彼に伝えないといけない言葉があるよな。それは・・・・

「自分の幸せなんかよりも目の前の人が幸せになって欲しい。そうすることで自分の何か変われると信じてるから。」

 それこそ、今日までnoteを書てきた自分の答え。例え、どれだけ馬鹿にされ、都合良く使われてたり、自分の記事が評価されなかったり、たまたま記事を見つけて、いいねされてたとしても、それでも、目の前の人の為に、自分の存在意義の為にも困ってる人に手を伸ばしたい。  

「目の前の人の幸せの為に?」
 
「覚えてるだろ?『記事を書くのは自分の利益より見てくれた人のことを優先する。』その意思は変わってないよ。だけど、社会とかルールとかメディアとか、そういう目には見えない黒い部分があるものを信じたり、自分の考えだけ伝えてもそれが当たり前の人には届かないんだ。」

 そうさ、今日まで書いてきた記事なんて彼が書いた記事に比べれば、いいねの数など滅茶少ない。だからこそ、どうすればいいか悩むし、ネタが無くなる。

「じゃあ、どうする気なの?」

 不安で何かに心酔したいかのような眼差しで見る彼。  

「日本一周をしてみる。」

 数分の間が開ける。

「は?」

 彼のリアクションは仕方がないことだ。彼の中にはそんな選択はないはずだからだ。

「旅をしながらもボランティアをしたり、人助けをしたり、お金はあんまりないけれど、大事なのは心だ。それと」

 彼の頭を撫でる。

「自分の運を信じてみようとすることだ。」

 彼は目を大きく開ける。そんな彼にニッと笑う。    

「お前は、自分が思ってるよりかも色んな人は認めてくれてるし、すげぇよ。」

 彼を抱きしめながら優しく伝える。

「いつか、君を肯定できるように俺は頑張るよ。」

 彼は子どものように泣きじゃくりながら顔を埋める。ふと、肌に触れた風が強くなっていることに気がつく。周りに目をやると風は強くなっていて、花は咲き乱れ、宙に舞う。 

「花が、散ってい。」

 彼は顔を上げ、俺に太陽のように明るい笑顔を涙を拭わないで向けてくる。

「ありがとう。僕も自信が持てた。僕を信じてみる。」

だんだん、花が視界を遮るぐらいに咲き乱れる。赤、白、黄色の花びらが重力に逆らい、視界いっぱいに紙吹雪のようにきれいに咲き乱れる。 

「僕も、君とは違う未来を歩めるように自分の運を信じてみるよ。」  

   



 視界が真っ白になった途端目が開く。そこには先ほどまで見てた天井が現れる。  

「俺は、昼寝してたのか。」

 目が覚めたときの時間は15時55分を指してた。自分はnoteを開き、かつての記事を見つめニヤける。

「さてさて、日本一周を始めてらどんな物語になるのでしょうか?」 

 そうつぶやいて、この一件を記事にすることを決意する。 

 カタン!!
 
 パソコンを少し早く叩いて生地を完成させる。 

「終わった〜!!流石に4000文字以上は頑張ったほうだよ〜!!」 

 ため息交じりに言葉を吐き出す。時間は朝の4時近くを指す。

「とはいえ、今のうちにこういうの書いておかないと忘れるし、自分の日本一周の決意表明として書いておきたかったし、多少のオールは仕方がないか。」

 この記事を見た人はこう思っただろう。「まじで日本一周するの?」「てか、上記の話ってどんなことを体験したの?」「今までどんな経験をしたの?」 「いつ行くの?」などなど、いろんな疑問があると思う。けれど、その疑問はこれから自分が何をするか、どうなったか、全ては、「選択」と「運命」で全てが変わる物語。

「なんてね。嘘かホントかわからないんだけどね。」

 このお話自体、そしてこれからのお話も本当なのか、嘘なのか、それは誰もわからない。しかし、一つ言えることがある。

 このお話はこれからの一人の人間の旅までの苦悩とアクシデント、そして、旅が始まってからの出会いと別れ。

 そして、この記事を見てくれて人に対しての救いと一人の人間の祈りと嘘の物語のプロローグに繋がるお話でした。

 noteもやってますので、良かったら確認してください。