レッドドラゴンの討伐を終えた一行は、プレアモードの王城で束の間の休息を取っていた。

王都の復旧は急ピッチで進み、民の表情も明るく輝いている。

城の中庭では、アーサーとアモードが手合わせをして汗を流しており、ふたりの剣さばきをメルケルが真剣な眼差しで見ている。
そこに、プレアモード国王がやって来てアモードに何やら指南しているようだ。

その様子を遠くに見ながら、サラはプレアモード王都に張った結界の点検をしていた。
今のところは破られている気配はない。
念のため、サラは結界を強化するべく魔力を集中させた。
「これでよし。」
グロリアスをもってしてもこの結界は簡単には破れないだろう。

プレアモード国王とアモードの姿を見ながらサラは亡き父コロルに思いを馳せていた。
「お転婆なサラには強くて優しい婿を取らねばならぬな」よくそう言って笑っていた父の姿を思うと涙が溢れ、同時にその父を殺したトランプへの憎しみは増してくる。
「おのれ…トランプ…必ずこの仇はとる…。」

(そうだ…その調子だ…憎しみを増長させろ…)

突然サラの心にその声は響いた

(憎しみこそ最大の力…全てを淘汰しお前を無敵にする…その力を身に付けよ…人は裏切るもの…信じられるのは己の力のみ…目覚めるのだ!黒魔道師マールーンよ!)

サラがその声に耳を傾けかけたその時

とんとん!
右の肩を優しく叩かれ、はっとして見上げるとそこには、アーサーがにっこり笑って立っている。

「アーサー!どうしたの?」

「どうしたの?はこっちのせりふだよ。おまえの様子がおかしかったから見に来たんだ。何かあるなら俺に話せよ。仲間だろう。」

「ありがとう。アモードと王を見ていたら父を思い出して…。」

「仲のいい親子だものな。サラの親父さんはどんな人だったんだ?」

「父は厳格だったが、移民を含めた国民全ての幸せを願い、その為にどうすればいいのかをいつも考えている人だった。私にはとても優しく、聖魔道師の道を選んだときも周りの反対を抑えて応援してくれた人だ。『サラよおまえが信じた道を歩むといい。おまえの人生はおまえのもの。お転婆なおまえには強くて優しい婿を取らねばならぬな』が口癖の人だった。父がトランプに殺された上に、干ばつと戦争で国は荒れた。かつてのディザスターはトランプに殺されたのだ…。」
話しているサラの手が、怒りで震えている。

その手をそっと取り、アーサーは言った。
「そうか。いい親父さんだったんだな。その親父さんのためにも、神龍を復活させて戦いを終わらせてディザスターを立て直さないとな。そのためにはサラ、おまえの力が必要なんだ。闇に誘われてる時間などないぞ」
ぽんっ!と肩を叩き、優しくウインクしてアーサーは立ち去った。

見透かされている…。
サラは驚きと共にどこかほっとした表情でアーサーを見送り天を仰ぐ。

闇に付け入られるとは私もまだまだ修行が足りんな…。
そんなサラの視界に1羽の真っ白な隼が飛び込んできた。
綺麗…。見とれるサラを尻目に隼はまっすぐアーサーめがけて飛んでいき、その肩に止まる。

「サラー!こっちへ来てくれ!」
アーサーの声が響きわたる。
サラは急いでアーサーの元へ向かった。
全員が揃ったのを見て、アーサーが口を開く。
「この隼は、仲間のドラゴンバスターからの伝令だ。どうやら地龍エレツの封印場所が分かったようだ。
地龍はここから南に行ったギルガント公国だ。早速向かうぞ。」

「分かった。メルケル、急ぎ旅の支度を整えよ」

「はっ!アモード様」

地龍討伐に向けての旅が始まろうとしていた。

(つづく)