間取りを描くということ・マドラーな人生
物心ついた頃から広告の裏に間取りを描いていた。昭和の時代、広告の裏は白紙が当たり前だった。広くもない狭いアパートに家族で暮らしていた私は、そこに理想の家を夢見て鉛筆を走らせていた。玄関から廊下を伸ばし、リビングの隣に和室を置いてみたり、風呂とトイレの位置に悩んでみたり。庭は必ずつけた。現実にはなかった空間を、自分の手で自由に描けることが嬉しかった。住宅広告に載っている間取りを見るのも好きだった。平面図の中にある、小さな「生活」の気配を読み取るのが楽しかった。間取りを描く癖は、大人になって庭付き一戸建てに住むようになってからも変わらなかった。描くことそのものが好きだったのだと思う。数年前、「間取りが好きな人を“マドラー”と呼ぶ」と知った時は、思わず笑ってしまった。まさかそんな呼び名まであるとは。自分のような人間が他にもいることに少し安心した気がした。そして、世の中にはいろいろな“変わった”人がいるものだと、改めて思った。