これはジャーナリストの佐瀨稔の「ヒマラヤを駆け抜けた男」というノンフィクションを引き写しにしたも同然なので、どこかに出すわけにもいかないモノです。書かれているのはヒマラヤ8000m峰をのべ12回登頂してマッキンリー(デナリ)で亡くなった登山家・山田昇氏で、その遭難判明から捜索までの経緯を自分の小説に取り入れました。
気さくで沢山の人に慕われたという山田昇氏の
イメージは、私の中では坂下の相方で先にエヴェレストで遭難死した遠藤に近い。登山を題材にした私の小説ではいちばん先に坂下と遠藤の物語があり、遠藤が坂下を殺すというバージョンもありました。
ここでは章の最後にこれが記者の署名記事だと分かるようになっていますが、これは坂下自身は殆ど登場せず、記者の取材で、周りの人間から坂下がどんな人物だったかを浮かび上がらせる物語でした。登山の専門知識のなさから書ききれていないです。
「聖母の夜」に坂下を出したのは思いつきで、古市建以外の他のクライマーも流入しました。本音を出さない点では古市建と同様ですが、古市よりも人当たりが良く柔軟で、それが古市の「傲岸と紙一重の無表情」と同じ働きをしています。